OECD ー パリ、2017年12月5日
OECDの新報告書、『図表でみる年金2017 (Pensions at a Glance 2017)』によると、人口高齢化、高齢者の間の不平等の高まり、仕事の性質の変化などの影響を抑えるために、OECD諸国は年金改革に一層取り組む必要があります。
本報告書は、OECD地域全体の年金に対する公的支出は、2000年以降、対GDP比約1.5%上昇しています。しかし、予測された支出の伸びのペースは、かなり緩やかになってきました。
それと同時に、近年の改革により、多くの年金受給予定者の所得は下がることになります。人々は長寿になり、適当な年金を保障するためには、退職年齢を引き上げなければならなくなります。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、次のように述べています。「資金の持続可能性と年金の妥当性に課題があるということは、政府による大胆な改革が求められているということである。仕事を巡る環境は急速に変化しており、政策当局はそのことを考慮に入れて今日の決定を下す必要があり、また、社会保障制度によって退職後に取り残される人が出ないようにしなければならない。」
今日働き始めたフルタイムで平均的な賃金を得る労働者の場合、強制加入の年金制度による年金の純所得代替率は、OECD平均で63%ですが、英国の29%からトルコの102%まで幅があります。平均すると低所得者の場合、代替率は10ポイント高く、メキシコとトルコの40%未満から、デンマーク、イスラエル、オランダの100%以上まで幅があります。
現行の法制度では、2060年までにOECD加盟諸国のおよそ半分の国々で、通常の退職年齢が平均すると男性で1.5年、女性で2.1年引き上げられ、ほぼ66歳に達することになります。最新の予測によると、将来的には、退職年齢はルクセンブルク、スロベニア、トルコでは60歳、デンマークでは74歳になると見られています。
しかし、予想されている退職年齢の引き上げ幅は、予測されている寿命の伸びに追い越されるものと見られており、人々が退職後に過ごす時間が人々の就労生活に対して長くなります。高齢者の雇用をさらに増やし、多くの人々に適当な年金を保障する必要があると、本報告書は述べています。
また『図表でみる年金2017』は、より柔軟な退職後のオプションを求める声の高まりに各国がどう答えればよいかということも考察しています。退職年齢を厳密に設定することは、社会全体の利益にならない可能性があります。現在、欧州の60-69歳の人々で、働きながら年金も受け取っている人は、約10%に過ぎません。65歳を過ぎて仕事をしている人々の半数は、パートタイムの仕事に就いています。この割合は、1990年代以降変化していません。オーストラリア、チェコ、フランス、オランダなどいくつかの国々は、早期部分退職制度を認めています。
公式の退職年齢後も仕事を続けながら年金を受け取ることには、障害があります。例えば、収入制限があるのはオーストラリア、デンマーク、ギリシャ、イスラエル、日本、韓国、スペインです。また、特に雇用主による年齢差別、またはパートタイムの就労の受け入れといった、退職年齢を過ぎても働き続けることを妨げる障害も存在します。
全体的に見ると、フルタイムで定年まで働いた人々にとって、退職年齢を巡る制度がより柔軟なのは、チリ、チェコ、エストニア、イタリア、メキシコ、ノルウェー、ポルトガル、スロバキア、スウェーデンです。
政策当局は、退職を先延ばしにしても十分に見返りがあるようにしつつ、通常の退職年齢に達する2、3年前に退職する人々が過度に損失を被ることがないようにしなければなりません。エストニア、アイスランド、日本、韓国、ポルトガルでは、退職年齢後も働き続けることの金銭的インセンティブが大きいものの、年金提供者にとってはコストがかかります。柔軟性は、年金制度の収支バランスを確保することを条件とし、年金額を退職年齢の柔軟化と並行して保険数理的に調整すべきです。
『図表でみる年金2017』は、OECD加盟35カ国と主要非加盟諸国*の国の年金制度について、比較可能な指標を収録しています。(* アルゼンチン、ブラジル、中国、インド、インドネシア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ。)
カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、スペイン、スイス、英国、米国については、国別サマリー(Country Note)があります。
OECDの最新の報告書、『高齢者の不平等を避けるには(Preventing Ageing Unequally)』でも、不平等の高まりと高齢化の影響を分析しています。それによると、高齢になってからの不平等のリスクは、現在すでに退職している人々よりも若い世代の方が大きくなり、また1960年代以降に生まれた人々が高齢になったときの状況は、それ以前の世代のそれと比較して劇的に変化すると見られています。詳しくは下記のサイトをご覧ください。
http://oe.cd/pau2017
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部メディア課(news.contact@oecd.org / tel. + 33 1 4524 9700)までお寄せください。
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