2018年11月27日 – 韓国、仁川市
OECDの新報告書、「GDPを超えて:経済社会的実績にとって重要なものを測る(Beyond GDP: Measuring What Counts for Economic and Social Performance)」によると、経済と人々の暮らし良さを測るより良い尺度があれば、各国政府は2008年の金融危機による損害を抑え、人々の公的機関・制度に対する信頼が失われるのを防ぐために、もっと強力な対応を取ることができたはずです。
本報告書では、人々の経済的不安定さを測る尺度など、様々な尺度があれば、不況の結果がGDP統計が示唆したより深刻だったことがわかったはずだと述べています。その尺度がなかったため、セーフティネットと社会保障の強化の重要性は、十分に考慮されませんでした。
本報告書は、経済効果と社会進歩の計測に関するハイレベル・グループの議長3名、ジョセフ・E・スティグリッツ教授、ジャン-ポール・フィトゥシ教授、マルチン・デュランOECDチーフエコノミストが執筆したもので、政府は複数の指標を用いて国の健全性と人々の生活条件を評価すべきだと提言しています。
この一連の指標には、経済的安定性、環境悪化、信頼などに加え、人々のスキル、健康、雇用、所得など、最も重要な側面を網羅するものを含めるべきです。平均的な成果だけでなく、政策が社会の各部分にどのように影響しているかということにも注意を払い、現在及び将来の暮らし良さについて、バランスの取れた配慮をするべきです。これらの指標は、主な関心事を反映できるくらい広く、しかし政策当局と一般の人々がよく理解できるくらい絞り込まれたものにすべきです。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、韓国の仁川市で開催されている第6回OECD World Forum on Statistics, Knowledge and Policyにて行われた本報告書の発表会見で、次のように述べました。「人々の生活と願望を真に把握できるより良い尺度によってのみ、より良い生活のためのより良い政策を立案、実施することができる。自分たちが研究するのに最も実用的だと思う真実ではなく、人々の生活の真実を立証するよう取り組む必要がある。それが、人々の組織や制度に対する信頼を回復し、包摂的成長を支持する上で重要な役割を果たすだろう。」
スティグリッツ教授は、次のように述べています。「GDPは、経済社会の健全性の中心的尺度として、過度に強調されてきた。経済危機以前には、これが潜んでいた危機に対して政策当局の目をつぶらせ、危機以後は誤った政策選択をさせてきた。生活において重要なこと、例えば不平等、人々が自分のしていることや健康状態、能力についてどう感じているか、あるいは環境の持続可能性などに目を向けなければ、我々は人々、社会、そして地球にとって正しい選択をすることができない。」
また、フィトゥシ教授は次のように述べています。「人々は、少なくとも社会は進歩しているという望みがなければ生きられない。このことが我々の研究を支えてきた。退行的進化をどのように、そしてなぜ隠してきたかを明らかにするために、経済的安定から信頼、そして持続可能性、機会の不平等を含む様々な不平等、その他暮らし良さの尺度と決定要因まで、利用できる尺度を精査した。GDPに焦点を当てる代わりに中心となる質問は、何の、そして誰のための成長か、ということである。」
また本書では、2009年以降のGDPを超える尺度の開発過程とそれを政策策定に利用する過程における進歩を評価しています。本書には、前進するための以下の12の提言が収録されています。貧困諸国の統計インフラの向上に投資をするよう国際社会に働きかける;統計局が富の分布の上端の動向を把握するために税務記録を利用できるようにする;GDPの成長から恩恵を受けているのが誰かを理解するために不平等に関する情報をマクロ経済統計に統合する;人々の経済的不安定に対する政策の有効性を日常的に評価して、持続可能性と回復力の尺度を改良する;調査と試験的ツールにより信頼と社会的慣習を測る。
本報告書の姉妹版、「優良な尺度のために:GDPを超える暮らし良さの尺度のための研究推進(For Good Measure: Advancing Research on Well-being Metrics Beyond GDP)」では、経済学者、政治学者、社会学者、心理学者、統計専門家などによるこれらの議論への貢献をまとめています。
これらの報告書は、仁川市で開催されているOECD World Forum on Statistics, Knowledge and Policy で発表されます。このフォーラムには、経済、環境、医療、開発、社会問題、ガバナンス、統計など様々な分野の専門家、政策当局、企業のリーダーが世界中から参集し、今後数十年間に人々の生活を再形成するであろうトレンドと、今後の課題に対処するために埋める必要がある情報格差について議論を行っています。
本書は、 OECD Better Life Initiative の参考資料となるものです。このイニシアチブは、人々にとって重要で、総合することで人々の生活の質を形成する一助となる生活の諸側面を把握できる統計の開発に焦点を当てています。その中には、(例えば、所得と消費と富;主観的幸福;信頼;労働環境の質などの)測定ガイドラインの開発や、主観的幸福の成果(例えば所得、富、健康格差)や機会の分布についての証拠の構築などが含まれます。
Beyond GDP: Measuring What Counts for Economic and Social Performanceは、下記のサイトからご覧になれます。
http://www.oecd.org/publications/beyond-gdp-9789264307292-en.htm
For Good Measure: Advancing Research on Well-being Metrics Beyond GDPは、下記のサイトからご覧になれます。
https://www.oecd.org/economy/for-good-measure-9789264307278-en.htm.
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