OECD - 2016年5月31日
生産性の伸び悩みと格差拡大は、経済実績の改善にとって二大障害であることが、OECDの最新報告書で明らかになりました
The Productivity-Inclusiveness Nexus は、これらの問題それぞれの背後にある原因を調査し、それらがどの程度結びついていて、一貫性のある政策対応をどのように取ればよいかを調べました。 特に、人々のスキルに投資したり、全ての企業や地域が成功できる機会を与えられるような環境に対して投資することにより、生産性の高い資産を拡大することが必要であると指摘しています。
本報告書では、生産性の低迷について考え得る様々な説を議論しています。この生産性の伸びの鈍化は、21世紀に入って以降OECD加盟諸国の約90%で起こっており、今では新興市場諸国にも波及しています。本報告書は、急速な技術の変化を生産性の伸びにつなげられなかったことが循環的・構造的要因につながっていると述べています。
循環要因の1つは、世界全体の需要が弱い中で、物的資産への投資が低迷し続けていることです。構造的要因としては、先進的または「フロンティア」企業と、後れをとっている企業との間で、生産性におけるばらつきが拡大していることが挙げられます。
本報告書では、生産性の伸びのばらつきについて、いくつかの考え得る相互補完的な解説をしています。その中には、技術を普及させる仕組みの故障、フロンティア企業による独占利潤獲得の可能性などが含まれます。それに関連する問題の1つとして、一部市場における競争の欠如があり、それが原因で実績を上げていない企業が残存し、価値ある人材と資本資源を非生産的な活動に閉じ込め、所得の不平等が固定化する一方で、先進的な企業が市場力を高めて参入障壁を高くしている可能性があります。
本報告書は実際に、所得、富、暮らし良さ、機会の不平等が大半の国々で高まっていることも明らかにしています。本書では、不平等の様々な側面が相互にどのように作用する傾向があり、個人の暮らし良さを改善する努力を妨げ、経済の潜在的生産性を低下させているかということに着目しています。特に、社会の発展から取り残された低所得者層と地域に経済社会的不利益が蓄積する傾向があることに言及しています。
不平等が高まるほど、人口の下位40%でスキルに投資できる人の数が減少し、それによってさらに不平等が悪化し、生産性の伸びが削減されます。本報告書では、過去20~30年間で企業間の生産性のばらつきが高まったことが、賃金配分の拡大につながってきたという考察も示しています。
本報告書は、デジタル経済の伸びにより雇用とスキルにどのように新たな課題がもたらされるかということに注目しています。また、グローバル経済において金融が占めるウェイトが高まっていることで、投資が生産的な活動に向けられなくなる恐れがあり、他方で所得分配の上位に富がさらに集中する結果になるとも述べています。
All on Board for Inclusive Growth Initiative(包括的成長に向けたイニシアチブ)の関係から本報告書をリードしたガブリエラ・ラモスOECD事務総長首席補佐官兼G20シェルパは、「生産性と不平等という課題の「つながり」に対しては、新しい一貫性のある多角的な政策アプローチを取って、これら問題を同時に精査し、同時に取り組むことが求められる。後れをとっている人々、企業、地域を支援することを目的とした対策が求められる。」と述べました。
スキルを労働市場のニーズによりよく合致させ、生涯学習と訓練の機会を提供することは、その解決策の1つになります。それだけでなく、起業を奨励し、イノベーションを普及させ、小企業が必要とするスキルと資源を利用できるようにすることも、解決策になります。
本報告書はさらに、地域と都市が地域社会特有のニーズに政策を適応させることによって重要な役割を果たすとも述べています。例えば、住宅政策と交通政策は、不利な状況にある人々が訓練の機会や雇用を得るのを支援するという役割を果たすことができます。
OECDのNew Approaches to Economic Challenges (NAEC)イニシアチブの中で、本報告書は従来の政策の「縦割り」を壊し分野横断的な制度改革を推進して、一貫性のある相互補完的なアプローチを政策策定に取り入れる必要があることも強調しています。
本報告書のダウンロード: The Productivity-Inclusiveness Nexus
報道関係者のお問い合わせは、OECDメディア課(news.contact@oecd.org; tel + 33 1 4524 9700) 、または、OECD報道広報官(naoko.kawaguchi@oecd.org )まで。
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