OECD ー 2021年2月22日
日本は、急速に変化する働き方に後れを取らないようにするために、成人学習制度を向上させる取り組みを行う必要があると、OECDの新報告書、「社会に対応する成人学習の機会をつくる(Creating Responsive Adult Learning Opportunities)」は述べています。
本報告書によると、デジタル化、環境に配慮した経済、人口高齢化といった構造的変化により、スキルの需要と供給が変化しています。OECDの推定では、日本の職業の15%が今後15年間に完全に自動化されるリスクが高く、また39%は仕事の仕方が大幅に変わることによる影響を受ける可能性があります。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックは、こうした変化を加速させるかも知れません。日本の産業構造と労働力の構成は、急速に変化しており、女性、高齢者、非正規労働者が雇用全体に占める比率が高まっています。
マーク・キースOECDスキル・就業能力課長は、東京で行われた本報告書の発表会見で次のように述べています。「日本のスキル開発制度は、スキル習熟度の高さと学歴という点で、世界で最も優れている。しかし、近年の労働市場の変化と新たなテクノロジーの急速な普及により、人々のスキルアップのスピードを維持するためには強く継続的な学習制度が必要であることを浮き彫りにしている」
このように学習の機会へのニーズが高まっているにもかかわらず、日本では成人の約3分の1しか毎年職業訓練を受けておらず、しかもそうした訓練の大半は雇用者が提供する実習です。したがって、特に企業が提供する訓練を受けられない労働者の割合が高まる中では、公的な対策は実務外訓練と自己啓発活動の機会の拡充を優先すべきです。
また、特定の労働者の訓練参加を妨げる障壁を取り除くことに的を絞った措置も必要です。非正規労働者は、雇用主が提供する訓練を受けられる可能性が約50%低くなっています。正規労働者の中でも、高齢の労働者の方が正規または非正規の訓練に参加する機会が若い正規労働者と比べて30%以上低くなっています。中小企業の労働者は、訓練に参加する機会が大企業の労働者と比べてほぼ50%低くなっています。
訓練の機会とその内容を雇用主や労働市場のニーズに沿ったものにすることも重要です。構造変化の影響を最も強く受けるであろう日本の労働者が、必須技能を身につけ新たな業務や職業にスムースにいこうできるようにする取り組みを強化すべきです。
成人が自分のキャリアに起こりうる変化と妥当なスキル開発の機会について情報に基づく決定をできるように、キャリアガイダンスを受けやすくすることでこうした取り組みを支える必要があります。日本政府が定期的かつ体系的なキャリアガイダンスの提供に力を入れているにも関わらず、そうしたサービスを雇用者に提供している雇用主はそれほど多くありません。雇用主も労働者も、キャリアアップの機会を制限しているスキル不足がどのようなものかを把握することに苦慮しています。
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スキルと雇用に関するOECDの研究の詳細は、下記のウェブサイトをご覧下さい。http://www.oecd.org/employment/skills-and-work/
報道関係者のお問い合わせは、OECD東京センター横川(yumiko.yokokawa@oecd.org)までお寄せください。
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