OECD-パリ、2019年4月15日
日本経済は現在、戦後最長の好景気にあり、雇用創出、企業投資とも堅調です。次の世代に持続可能で包摂的な成長を遺すために、政府は急速な人口高齢化と高額な政府債務という2つの相互に関連した問題を乗り越える政策を打ち出さなければなりません。
最新の「対日経済審査報告書(OECD Economic Survey of Japan)」 では、近年達成されている成長の背後にある要素と、今後予測されている労働力の減少によってもたらされる重大な変化を考察しています。本報告書の見通しでは、民間部門投資とグローバルバリューチェーンを妨げる恐れのある世界の貿易摩擦と中国経済の鈍化を考慮に入れ、今年と来年の成長率を約0.75%になると予測しています。
本報告書では、労働力が減少する中で日本の人材を有効活用するために、抜本的な労働市場改革が必要だと述べています。また、支出増の圧力となっている人口高齢化の中で、財政の持続可能性をどう確保するべきかということについても考察しています。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、東京で行われた発表会見で次のように述べています。「日本経済は、大胆な金融政策、柔軟な財政政策、構造改革というアベノミクスの3本の矢に支えられてきた。国家財政と労働市場を高齢化が進む社会に適したものにする改革が、財政の持続可能性と将来的に繁栄を維持できるようにするために、早急に求められている。」
OECD諸国の中で日本の人口が最も高齢化すると予測されており、本報告書は労働力の減少への対策として幅広い労働市場改革が必要であることを強調しています。年功ではなく成果主義に基づく柔軟な雇用、賃金制度体系に移行することによって、日本は、女性と高齢者を含むその人的資本を有効活用することができます。また、退職年齢を60歳に設定するという企業の権利を廃止し、年功と賃金とのつながりを削減し、女性の雇用の障害となるものを取り除き、育児をしやすくして彼女たちの労働市場における役割を高める措置を見直すことが含まれます。
高齢者数が増加して公的支出への圧力が高まることから、日本の公的債務を安定させる取り組みを強化する必要があります。現在の日本の公的債務は対GDP比226%で、OECD諸国中最も高くなっています。具体的な支出削減、消費税の段階的引き上げを含む増税などを含む包括的な財政再建策を導入することで、財政の持続可能性が改善することになります。
医療改革、特に病院以外の場所で長期介護を行うこと、予防医療の改善、ジェネリック医薬品の利用拡大などが、支出を抑える上で緊急に必要とされています。税制改革、年金改革も求められます。
労働生産性の向上も、縮小する労働力の影響を相殺する上で、鍵を握っています。特に大企業と中小企業との生産性ギャップを埋めるための政策を模索すべきです。
本報告書の概要(Overview)と主な結論は、以下のウェブサイトでご覧いただけます。 http://www.oecd.org/eco/surveys/japan-economic-snapshot.
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
Yumiko Yokokawa in the OECD Tokyo Centre, or Lawrence Speer (+33 1 4524 7970) in the OECD Media Office in Paris (+33 1 4524 9700).
Follow us
E-mail Alerts Blogs