OECD - パリ、2020年9月8日
新型コロナウイルス危機により、世界中で教育制度に内在する多くの不備と不平等が浮き彫りになりました。各国政府が経済と人々の暮らしの立て直しに着手しているときでも、長期的視点から教育への公的支出を引き続き優先して、すべての若者が学習を継続し、学校で良い成績を残し、社会に貢献するために必要なスキルを身に付ける機会を等しく持てるようににすることが不可欠です。
『図表でみる教育2020年版 (Education at a Glance 2020)』と新型コロナウイルス危機の影響を分析した附録レポートによると、新型コロナウイルスのパンデミックが教育支出に及ぼしている影響の全貌はまだ明らかになっていませんが、各国政府は経済の停滞、税収の減少、医療費と社会保障費の増大により公的資金の配分を巡って難しい決断を迫られることになります。2017年には、初等教育から高等教育に対する公的支出総額は、OECD諸国平均で政府総支出の11%を占めていました。その割合が最も低かったのはギリシャで約7%、最も高かったのはチリで約17%です。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリで行われた発表会見で次のように述べました。「教育制度の強化は、政府の危機回復計画の中心に据えるべきで、若者には成功するために必要な技能と能力を身に着けさせる必要がある。この危機によって、多くの国々ですでに明らかになっている教育の不平等を拡大させないように、できる限りの取り組みをしなければならない。我々は、現在の危機によって大規模な混乱に対処する能力があるかを試されている。今、この危機の遺産として危機対応能力が高い社会を構築できるか否かは、我々にかかっている」
今回の危機で特に深刻な影響を受けているのは職業教育・訓練校(VET)です。本報告書によると、ロックダウン中に経済と社会生活を支えていた多くの職業は職業資格が必要であるため、このことは大きな懸念となっています。
OECD諸国平均で、現在の若者は彼らの親世代と比べて、進路として職業教育よりも大学の学位を求める傾向が強くなっています。所得も低くなっています。後期中等教育の職業課程を修了した成人の収入は、後期中等教育の普通課程を修了した人々のそれと同程度ですが、高等教育修了者よりもOECD諸国平均で34%少なくなっています。
各国政府は、職業実習の拡充、民間部門との連携強化など、職業課程を多くの若者にとってもっと魅力的あるものにする対策を採る必要があります。現在、後期中等教育の職業課程を履修している生徒で学校のカリキュラムと職業実習を組み合わせたプログラムに参加している割合は、OECD諸国平均でわずか3人に1人です。
職業課程から高等教育への進学を容易にすることも重要で、学習成果の向上につながります。職業課程の生徒は、そこから高等教育に進学できる場合の方がそうでない場合よりも職業課程を修了する傾向が高くなっています。今日では、生徒の10人にほぼ7人が、原則として高等教育に進学できる課程を履修しています。
今回の危機では、高等教育機関の価値を巡る懸念も高まっています。高等教育課程の大半がオンラインでしか利用できないにもかかわらず、多くの時間と費用をかけることに躊躇する学生がいるためです。このことは、学生が海外で学位を取得すことの真の価値に疑問を持つことにもなり、国際的な学生の移動にも影響を及ぼすでしょう。
次年度に留学生数が減少すると、大学が提供する中核的な教育サービスに打撃を与えるだけでなく、大学が自国の学生に提供している資金的支援と研究開発活動にも間接的に深刻な影響が及ぶことになります。留学生が高等教育機関の学生に占める割合はOECD諸国平均で6%ですが、オーストラリア、ルクセンブルク、ニュージーランドでは20%以上を占めています。国際的な学生の移動が特に多いのは博士課程で、平均すると学生の5人に1人が学位取得のために留学しています。大学はその意義を維持するために、学習環境を改革し、デジタル化によって学生と教員、そして学生同士の関係を置き換えるのではなく、拡充、補完する必要があります。
Education at a Glanceは、世界各国の教育の現状を測った比較可能な統計データを収録しています。OECD加盟37か国の他、アルゼンチン、ブラジル、中国、コスタリカ、インド、インドネシア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカの教育制度を分析しています。
主要データを含む詳細は以下のウェブサイトでご覧いただけます。 http://www.oecd.org/education/education-at-a-glance/
日本についてのカントリーノート(日本語版)はOECD iLibraryでご覧いただけます。
エグゼクティブ・サマリー(日本語版)はこちらからご覧いただけます。
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
OECD Director for Education and Skills Andreas Schleicher (tel. + 33 1 45 24 18 97)
the OECD’s Media Office (tel. + 33 1 45 24 97 00).
Also AvailableEgalement disponible(s)
Follow us
E-mail Alerts Blogs