2015年12月3日
OECDの年次レポート最新版「Revenue Statistics 2015(税収統計2015年版)」によると、OECD加盟国全体で経済危機以降、法人税収が減少しており(2007年から2014年で3.6%から2.8%に減少)、そのことから個人納税者への負担が一層高まっています。個人所得税収は2007年から2014年の間で8.8%から8.9%に上昇し、VAT税収は6.5%から6.8%に上昇しました。
パスカル・サンタマンOECD税制センター長は、「法人納税者は引き続き納税額を少なくあげようと方法を模索している。その一方で個人がその分の負担を強いられる結果となっている。経済危機以降見られる税収増加分のほとんどは個人の負担からきており、社会保障、VAT、個人所得税などが占めている。このような状況であるため、法人納税者に自らの分を公平に支払わせることを確実にする取り組みが至急求められている」と述べました。この取り組みは、特にOECD/G20税源侵食利益移転(BEPS)プロジェクトがフォーカスしており、各国政府に税収確保のための解決策を提供しています。
本レポートによると、OECD加盟国全体で、GDPに占める税収の割合は2014年には34.4%に増加しました。これは前年から0.2%ポイントの増加となり、32.7%だった2009年以降、平均で年0.2%ポイントの割合で増加していることになります。税負担は、GDPに占める税収全体として算出されています。
このような税収増加の背景は様々あるが、主にVAT及び個人所得からの税収増加があげられ、これらだけで増加分の3分の2を占め、残りのほとんどは社会保障税や固定資産税が占めています。
多くの国が税率を上げたり、税ベースを拡大させていることから、任意の税率変更は重要な役割を担ってきました。OECD平均のVATは2008年の17.7%から2015年には最も高い19.2%に増加しました。34OECD加盟国中22カ国が2008年から2014年の間に所得税の最高税率を増加させました。
GDPに占める税収の割合は、2014年OECD平均で、危機前の2007年(34.1%)よりも0.3%ポイント高く、過去最高だった2000年の34.2%をも上回りました。同時期(2007から2014年)でGDPに占める法人税収は平均で3.6%から2.8%に減少した一方、社会保障税収は8.5%から9.2%に増加したことで法人税収減少分を相殺しました。
なお、本年度版レポートにはSystem of National Accounts(国民経済計算)への移行が、GDPに占める税収の測定に与える影響にフォーカスした特別章も設けております(本体pp.40-49)。
主な結論:
- OECD加盟国全体で、GDPに占める税収は2014年には平均34.4%で2013年(34.2%)から0.2%ポイント増加しており、OECDがGDPに占める税負担を測定し始めた1965年以降で最高の数字となった。
- それ以前では、2007年(34.1%)から2009年(32.7%)で減少したものの、2009年(32.7%)から2013年(34.2%)では1.5%ポイント増加。このような税収増加の背景は様々あるが、主にVAT及び個人所得からの税収増加があげられ、これらだけで増加分の3分の2を占め、残りは社会保障税や固定資産税が占めている。
- GDPに占める税収の割合は、2014年のデータを有するOECD30カ国(日本は含まれていない)中の16カ国で2013年から増加し、14カ国で減少した。2009年から2014年では、22カ国で増加、7カ国で減少、1国が不変であった。
- 2013-2014年の税収増加分の約80%は、消費税や個人所得税によるものだった。また、消費税と個人所得税は、2009-2014年の間の税収増加分の3分の2にもあたる。
- 2013-2014年の間で最大の税収増加があったのはデンマーク(3.3%ポイント増加)、アイスランド(2.8%ポイント増加)であり、次いでギリシャ(1.5%ポイント増加)、エストニア(1.1%ポイント増加)、ニュージーランド(1%ポイント増加)。
- 2013-2014年の間で最大の税収減少は、ノルウェー(1.4%ポイント減少)、チェコ(0.8%ポイント減少)、ルクセンブルグとトルコ(0.6%ポイント減少)。
- OECD加盟国間では、税収のトレンドに大きな違いがあり、例えばスペインでは2007-2014年の間で3.3%ポイント減少したのに対して、ギリシャは同時期で4.7%ポイント増加した。
- 歴史的に見ると、GDPに占める税収の割合は990年代から増加しており、OECD平均は2000年に34.2%のピークを記録した。2001-2004年の間では多少減少し、2005-2007年の間に再び増加し、34.1%に到達し、その後経済危機により急激に減少した。
- 2014年、OECD加盟国中、GDPに占める税収が最大の国は、デンマーク(50.9%)に次いでフランス(45.2%)、ベルギー(44.7%)。その一方で、最も低いのがメキシコ(19.5%)やチリ(19.8%)に次ぎ、韓国(24.6%)、アメリカ(26%)。日本の最新データは2013年であるため上記比較には入らない。2013年のデータだと、日本はOECD34加盟国中26番目(30.3%)だった(OECD平均34.2%)。
- 危機前の2007年と比較すると、2014年のGDPに締める税収の割合は、イスラエル、ノルウェー、スペインの3カ国で3%ポイント減少した。最も大きな減少はスペイン(2007年の36.5%から2014年の33.2%)。
- ギリシャの税負担は2007年の31.2%から2014年には35.9%に増加した。そのほか、同期間に2カ国(デンマークとトルコ)で4%ポイント以上の増加を記録した。
- 税収構造のデータはOECD加盟国全体としてそろっている最新は2013年のものであり、それによると、2008-2009年の急激な減少の後、個人所得税からの税収は現在回復していることがわかる。しかし、税収全体に占める割合は33.7%であり、36%だった2007年よりは以前低いままである。その一方で、社会保障税収は1.6%ポイント増加して平均で全税収の26.1%になった。
報道関係者のお問い合わせはOECD租税センターMaurice Nettley または、OECDパリ本部メディア課 (+33 1 4524 9700)、OECD東京センター(naoko.kawaguchi@oecd.org) までご連絡ください。
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