OECD-パリ、2020年11月27日
アジア・太平洋地域は世界のほかの地域よりも早い時期に新型コロナウイルスのパンデミックに襲われましたが、多くの国々がウイルスの管理について国際的に称賛されています。この地域のサクセスストーリーは、偏に感染者を追跡とその感染経路を特定して隔離する政策と、感染を抑えるための政府の政策に対する市民の信頼によるものだとOECDの新報告書は述べています。
「図表で見る医療:アジア太平洋地域 2020年版(Health at a Glance Asia/Pacific 2020)」は、アジア・太平洋諸国の医療制度に対する新型コロナウイルスの影響と、ウイルスを制御するための政府の対策について初めて分析を行ったものです。本書が指摘しているのは、オーストラリア、日本、韓国、ニュージーランドといったこの地域のOECD諸国が、感染者増加のカーブを緩やかにし、ウイルスの第一波を抑え込むことに比較的成功したということです。これらの国々は、実効的な検査・追跡、隔離の仕組みを構築するとともに、ソーシャルディスタンシングとその他の主要なガイドラインに対する信頼と遵守を確保しました。ベトナムやタイなどの国々は、ウイルスをうまく抑え込み感染による死亡者を抑えるための積極的な対策が有効であることを示しています。
それでも、データによると、ウイルスがこの地域に与えた人的影響は深刻です。アジア・太平洋諸国における新型コロナウイルスによる死亡者数は、次第に増加し、2020年10月始めには14万300人に達しました。これは世界全体で報告された死者数の12%に相当します。特に、ウイルスはインド、インドネシア、フィリピンで急速に広がり、人命に深刻な影響を与えています。
新型コロナウイルスを克服するには、各国・地域が危機の影響を受けている個人、家計、企業に継続的に支援を行う必要があります。新型コロナウイルスによる打撃が最も深刻な国々では、リスク要因に対処し、適応可能なサージ能力を創出し、医療従事者を強化しするとともにデジタル医療技術がもたらす機会を開拓することで、脆弱性に対処するべきです。アジア・太平洋地域の国々から得られた危機管理の成功という新たな実証は、これらの政策分野全般におけるグッドプラクティスについて、有益な考察を与えてくれます。
低所得・中低所得国では、経済的圧力によって、パンデミックの最中でもそれが過ぎ去った後でも、すでに限られている資源が基本的な医療サービスから奪われないようにすることが重要です。これらの国々の医療費を賄う能力には制約があり、家計支出に大幅に頼っているため、新型コロナウイルス対策にかかる巨額の費用をその財政能力で完全に賄うことはできないでしょう。
また、本報告書は、ガン、心疾患、糖尿病、さらにHIVや結核、マラリアの予防と治療は、パンデミックが始まると途絶してしまいました。新型コロナウイルスが妊婦、新生児、幼児、青年に及ぼす間接的な影響も甚大です。
本書のその他の結論は以下のとおりです。
- 寿命は2020年以降6年長くなり、2018年には70歳に達したが、産婦死亡率は低中所得国と低所得国では持続可能な開発目標が掲げるターゲットの2倍にと留まっている。
- アジア太平洋地域の低中所得国と低所得国における乳幼児死亡率は、2018年には新生児1000人当たり平均で27.2人だったが、同地域の高所得国やOECD平均の7倍で、SDGsターゲットである12人の2倍を上回っている。
- 低中所得国と低所得国では、医療費のほぼ半分は家計が負担している。カンボジア、バングラデシュ、パキスタン、インド、ミャンマーでは、2017年の医療費1ドルに占める個人負担の割合は60セントを上回っている。
Health at a Glance Asia/Pacific 2020は、OECDと世界保健機関(WHO)との共著で、アジア太平洋地域の27の国と地域の人々の健康状態、健康の決定要因、医療資源とその利用状況、医療支出と財源、医療の質に関する主要指標を収録しています。本報告書は、アジア太平洋諸国の人々の医療の対象範囲、利用しやすさ、経済的保障の改善に向けて政策当局がさらに歩を進める一助となる、総合的で使いやすい枠組みを提供しています。
本報告書はこちらからダウンロードできます。https://www.oecd.org/health/health-at-a-glance-asia-pacific-23054964.htm
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