2015年9月16日
最新のOECD中間経済見通しによると、世界の先進国経済では経済回復が進んでいることが見られるものの、世界貿易の停滞や金融市場の状況悪化が原因で多くの主要新興経済では成長見通しが曇っています。
アメリカでは、雇用と家計消費の上昇が堅実な成長を牽引していますが、投資は引き続き振るわない状況です。ユーロ圏の成長は改善しているものの、石油価格下落、低金利、ユーロ下落により加速されると期待されていたほどのものにはなっていません。日本では、成長は改善の道を辿ってはいるが、逼迫した労働市場が原因で賃金上昇の恩恵には依然としてつながっていません。賃金上昇は消費増加を下支えすることにもつながり、日銀のインフレ目標の達成にも貢献することができます。
短期的な経済見通しを困難にさせている主要因は中国です。成長は何とか保っているものの、いくつかの指標によると経済活動のペースが鈍化していることも窺えます。中国の輸入需要の顕著な鈍化は、世界の経済成長にとって重要なスピルオーバー効果があり、特に中国と密接な貿易関係を持っている新興経済や商品に依存している国には大きな影響となっています。多くの商品輸出国の見通しが弱く、特にブラジルは深刻な不況に陥っている中、今後2年間で最も成長の速い主要経済となることが予測されているがインドです。
中国の需要鈍化は予想以上に大きく、貿易や投資を通じた影響は非常に大きいが、世界の金融市場が大きく修正されない限りは、世界経済の回復を脱線させるということはない。
キャサリン・マンOECDチーフ・エコノミストは、「世界の成長見通しは、少し弱まり、重要な不確実性により曇りを見せてきている。新興経済は米国の金利上昇及び(または)予想以上に速い中国の成長鈍化にさらされる危険性がある。これが金融と経済の乱れを引き起こし、先進国経済をも巻き込み大きく足を引っ張る可能性がある。景気刺激策の継続は、世界的な需要を下支えすることは確実だが、国によって政策ミックスは異なり、財政安定性や長期的成長回復のための一貫性をもって選択しなければなりません。」と述べました。
OECD見通しによると、アメリカは今年2.4%、2016年には2.6%成長が予測され、イギリスは今年2.4%、2016年に2.3%成長が予測されます。カナダは今年1.1%、2016年に2.1%成長、日本は今年0.6%、来年1.2%の成長が予測されます。
ユーロ圏は2015年に1.6%、2016年1.9%の成長が予測されます。ユーロ圏の主要経済における成長見通しは一様ではありません。ドイツは、2015年に1.6%、2016年に2%成長、フランスは2015年に1%、2016年に1.4%成長、イタリアは2015年に0.7%、2016年に1.3%の成長が見込まれます。
今回の中間経済審査は、世界のマクロ経済政策が引き続き需要を下支えするものであるよう呼びかけています。先進国経済は、景気回復が起動にのることを確実にするために緩和的な金融財政政策を継続させるべきです。米経済の堅実な成長や資産価格を巡る懸念を考えると、米FRBは徐々に金利を間もなく上昇させる必要があるでしょう。最初の金利上昇をする時期が何か影響を及ぼすという可能性はほとんど無いが、上昇のペースが重要になってきます。
マン・チーフエコノミストは、「ユーロ圏にとって好都合な要因があり恩恵を受けているはずなのにユーロ圏の回復ペースは期待外れ。このことから、緩和的な金融政策及び、より成長主導の財政政策の継続が求められる。これらが共に機能することで、労働市場、ビジネス、投資、貿易への拡散効果が期待できるはずだ」と述べました。
中国における成長がバランスよく持続可能であることを確実にさせ、同時に金融制度の脆弱性に対応することが主な課題となります。当局は、急激な成長鈍化を避けるためにも更なる景気刺激策を提供すべきであるが、同時に刺激策が持続可能な成長を促進させることを確実にしなければなりません。消費拡大のためにもサービス自由化や社会支出の拡大をはじめとする政策が一助になるでしょう。中間経済見通しによると、他の経済も、需要下支えと調整の絶妙なバランスを割り出すことが必要であり、金融の脆弱性にも注意すべきです。
マン・チーフエコノミストは、「中期的に見て、投資を活性化させ潜在成長の鈍化を逆転させるためには、先進国と新興国には同様に、野心的な構造政策が求められる。」と述べました。
報道関係者のお問い合わせはOECDメディア課((+33 1 4524 9700, news.contact@oecd.org)までお願いします。
詳細は、www.oecd.org/economy/economicoutlook.htm をご覧ください。
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