OECD – ローマ、2021年6月30日
新型コロナウイルスのパンデミックで、企業部門と資本市場に以前からあった構造的欠陥が増幅されています。有効な政策を採らなければ、資本不足で不採算に陥る企業数が増加、高止まりし、収益力のない企業に投資される生産的な資源の量が増加して投資と経済成長が低迷するでしょう。
OECDの新報告書、「新型コロナウイルス危機後の資本市場におけるコーポレートガバナンスの未来(Future of Corporate Governance in Capital Markets Following the COVID-19 Crisis )」によると、新型コロナウイルス危機からの復興支援と将来起こりうるショックに対する危機対応力強化のためには相当な額の金融資源を投資する必要があります。コーポレートガバナンス政策と枠組みを強化することで、既存の企業も新企業も必要な資本を利用しやすくなるでしょう。
マティアス・コーマンOECD事務総長は、イタリアの経済財政担当相ダニエレ・フランコ氏とともにローマで行われた本報告書の発表会見に出席し、次のように述べました。「良いコーポレートガバナンスと機能的な資本市場は、我々の国々の経済が新型コロナウイルス危機から復興するのを支援する上で、重要な役割を果たす。また、それは企業部門の活力、競争力、将来起こりうるショックへの対応力の強化、例えば環境、社会、ガバナンスのリスクのより実効的な管理も後押しする。G20/OECD コーポレートガバナンス原則を世界全体で受け入れ、実施状況を審査することが、この目標の達成に重要である」
本報告書によると、危機の発生以後、債券市場は引き続き非金融企業にとって重要な資金源となっていました。2020年に非金融企業が発行した社債額は、2兆9000億米ドルという歴史的な額になりました。その結果、社債残高は2020年末には実質値で約15兆米ドルという過去最高の水準に達しました。
社債残高の質は悪化しています。2018年から2020年の間に、投資の格付けで最低ランクであるBBBとされた債務の割合は、格付けされた全投資の52%を占めました。2000年から2007年の間では、この割合は39%でした。世界的に見ると、負債は主に債務返済能力が比較的低い企業で積みあがっています。
株式市場は2020年に既存企業にかつてないほど多額の資本金を提供しましたが、新企業に対しては十分な支援を行っていません。2005年以降、世界全体で現在の全上場企業の60%に相当する3万社以上が、上場廃止になりました。これらの上場廃止となった企業は、新規上場に適合しておらず、上場企業の減少につながっています。その結果、公の株式市場を利用する企業数が大幅に減少し、2020年にあ集められた資金の大半は、数少ない大企業に向けられました。
コーポレートガバナンスの強い枠組みは、機能的な資本市場にとって不可欠です。危機によってもたらされた課題に対処するために、本書では、政策当局が優先すべき次の4つの課題を強調しています。:
- コーポレートガバナンス枠組みを、健康管理、サプライチェーン、環境リスクといったパンデミックで明らかになった弱点への対処と、監査の品質や所有権の集中、複雑な企業グループの構造などに関わる問題に対処するよう調整する。
- 健全な企業の株式市場へのアクセスを促進する。それにより、採算企業のバランスシートが強化され、持続可能な復興と長期的な危機対応能力に不可欠な新ビジネスモデルの出現が促進される。
- 特に一貫した比較可能な信頼できる気候関連の情報開示の枠組みを開発することで、環境、社会、ガバナンスのリスク管理を改善する。
- 破産の枠組みで復興と危機対応力を支える。複数の国々の間で一貫性のある目的にかなった破産制度が重要である。
本日併せて公表されたCorporate Governance Factbookでは、G20/OECDコーポレートガバナンス原則が世界的にこれらの枠組みの発展にどの程度影響を与えるかに焦点を当てています。例えば、コーポレートガバナンスが2015年に更新されて以来、OECD全加盟国、G20諸国、金融安定理事会(FSB)の加盟国を含む50か国の90%にあたる国々が、企業法や株式法、またはその両方を改正しました。
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