OECD、貿易の低迷と金融の歪みが世界の成長見通しにダメージを与えると警告

 

OECD ― パリ、2016年9月21日

最新のOECD中間経済審査(Interim Economic Outlook)によると、貿易低迷と金融の歪みが世界経済の低迷を加速させています。

 

 

世界経済の伸びは、今年は2015年を下回るペースになり、2017年に入ってようやくわずかながら上向きに転じると予測されています。本見通しは、低成長の見通しがさらに貿易、投資、生産性、賃金を抑制するため、低成長の罠に囚われた状態にあると警告しています。

世界貿易の成長は、2016年初頭から収縮し始め、現在ではその弱みはアジアに集中する形で、金融危機以前の伸び率の半分のレベルにまで低迷しています。投資の低迷は影響しているものの、中国におけるリバランス(製造業中心の経済から消費・サービス業中心に移行すること)と、グローバル・バリュー・チェーンの動向が反転したことは、貿易の伸びを恒常的に低迷させ、生産性の伸びをさらに弱くする兆しと捉えられます。世界市場を貿易に開放することに進展が見られず、部分的には閉鎖さえ見られることが、さらに貿易低迷に拍車をかけています。

超低金利とマイナス金利は、金融市場を歪め、金融システム全体でリスクが高まっています。株価上昇と利益及び成長見通し低下の間で食い違いがあり、多くの国における不動産市場の過熱と相まって、投資家の資産価値を急速に修正しようとする意欲を一層削いでいます。

キャサリン・マンOECDチーフ・エコノミストは、「世界貿易が急激に収縮していることから、経済の堅調さと既存の低成長の罠という問題に対する懸念が高まっていることがわかる。需要低迷が貿易低迷の一因であることは確かだが、メリットを共有できるような貿易政策に対する政治的サポートがかけていることは非常に憂慮すべきことである。金融政策の負担が重くなってきている。各国は、中央銀行への依存度を下げ、将来の世代の機会と繁栄を確保するためにも財政政策、構造政策の行動を実施に移さなければならない。」と述べました。

OECDは、世界経済の成長率を2016年は2.9%、2017年は3.2%と予測していますが、これは3.75%という長期見通しの平均を大きく下回っています。 

2016年6月発表の前回のOECD経済見通しと比べて、主要先進経済(特にイギリスの2017年予測)の見通しが小幅に下方修正されましたが、主要新興市場の商品生産者の状況が徐々に改善しているため相殺されます。

主要先進国の成長は低い水準に留まることが予測されます。アメリカでは、消費と雇用の伸びは堅調ですが、それも投資低迷により相殺され、2016年の経済成長は1.4%、2017年は2.1%と予測されています。ユーロ圏は2016年は1.5%、2017年は1.4%程度の成長率が予測されています。ドイツは2016年が1.8%で2017年が1.5%、フランスは2016年2017年とも1.3%、イタリアは2016年2017年は0.8%と予測されています。

イギリスでは、6月23日の国民投票でEU離脱が決まったことを受け、経済成長は鈍化しています。イングランド銀行の確固たる対応により市場は安定していますが、不安定要素は非常に多く、不利に働くリスクがあることは明白です。このような状況で、イギリスの成長率は2016年は1.8%、2017年は1%になると予測されており、これはここ数年のペースを大幅に下回っています。

日本の成長率は依然として低く、振れも伴っている状態が続き、円高及びアジア貿易の低迷が輸出に与える影響も原因となり、2016年は0.6%、2017年は0.7%が予測されています。カナダの成長率は2016年は1.2%、2017年は2.3%と予測されています。

中国は、経済を製造業に主導された需要から、消費とサービス主導のものへとリバランスを遂げているため、課題を抱えた状態が続くとみられています。中国の成長率は、2016年は6.5%、2017年は6.2%になると予測されています。インド経済は堅調な伸びが続き、2016年は7.4%、2017年は7.5%の伸びが予測されています。ブラジル経済は若干改善が見られるものの、深刻な不景気が続き、2016年はマイナス3.3%、2017年はさらにマイナス0.3%と予想されます。

本中間経済審査は、成長を活性化するためにも、財政、構造、貿易政策全てを考慮した対応を強化するよう求めています。財政面では、低金利が政府に人材、物的インフラに投資して短期需要と長期の成果、社会包摂性の実現ができるだけの財政的余地を与えています。

構造面では、特に貿易促進といったようなより意欲的な政策が求められています。その中には、新たな保護貿易的措置に断固反対し、既存の保護主義的措置を緩和し、貿易と投資に対するその他の障害に緊急に取り組むという公約を行うことも含まれています。 

OECDは、本日、本中間経済審査と同時に、世界的な貿易低迷に焦点を当てたレポート(Cardiac Arrest or Dizzy Spell:  Why is World Trade So Weak and What can Policy Do About It? )を発表します。

 

メディアの方々のご質問は、OECDパリ本部メディア課( OECD Media Office (+33 1 4524 9700, news.contact@oecd.org))、またはOECD東京センター(naoko.kawaguchi@oecd.org )までお寄せください。

 

詳細はこちらのサイトをご覧ください。 www.oecd.org/eco/outlook/economic-outlook/

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