OECD - パリ、2016年11月28日
『OECDエコノミック・アウトルック(OECD Economic Outlook) 』最新号によると、世界経済は、金融財政刺激策によって幅広い経済成長が支えられ、ほとんどの国々で同時に成長率が改善していることで強化されています。
世界経済の年間成長率は、2018年にはわずかながら改善すると予測されていますが、依然として金融危機以前と過去の回復時のそれを下回っています。長期的な課題が、世界各国経済が更に強化され、包摂的になり、一層強靱になる可能性を抑え込んでいます。
本アウトルックでは、長期化する成長の低迷が民間部門の投資、貿易、生産性を含む実績に引き続き影響を及ぼしていると指摘しています。現在の雇用率は、多くのOECD諸国で金融危機前を上回り、失業率は下落していますが、それは確かな実質賃金上昇につながっていません。根本的な傾向が変化する明らかな兆しが見えない中、OECD諸国全体の成長は、2019年には弱まると見られています。
アンヘル・グリアOECD事務総長は次のように述べています。「成長は上昇傾向が見られ、短期的にはプラス成長が見込まれるが、まだ明らかに弱点と脆弱さがある。金融政策支援が削減されるので、長期的な成長可能性を高めるための構造的、財政的対策に焦点を当てる必要がある。各国は民間部門の生産性を高め、賃金を上げ、より包摂的な成長を推進するために、様々な改革を実施する必要がある。」
多くの先進諸国、新興市場経済諸国の家計と企業の負債は多く、脆弱さの原因となっており、中期的な成長の持続可能性に疑問を呈しています。本アウトルックの特集は、「負債が多い時代の強靱さ(Resilience in a Time of High Debt)」で、マクロ経済手段と堅実な手段を用いるだけでなく、基調となっている構造問題にも対処して、統合された政策アプローチが必要であると呼びかけています。
金融制度がより堅実で健全であれば、負債に対する税のバイアスが削減され、株式市場は深化し、破産制度のあり方が改善されます。住宅の取得に対する租税補助を取り除き、住宅の供給をより流動的にすることで、景気と不景気の循環が抑えられます。
OECDは、世界経済の成長率が今年は3.6%、2018年は3.7%、2019年は3.6%になると予測しています。この予測には、2017年9月のエコノミック・アウトルック中間報告以降、世界経済が若干回復していることと、長期的な成長の可能性には懸念があることを反映されています。
米国の2017年の成長率は2.2%と予測されていますが、2018年には2.5%に上昇し、2019年に再び2.1%まで下落するとみられています。
ユーロ圏の経済成長は、2017年は2.4%、2018年は2.1%になると見られています。主要欧州諸国の成長がより強まっているため前回のアウトルックから上方修正されていますが、2019年には1.9%まで鈍化すると予測されます。
ドイツの成長率は、2017年は2.5%、2018年は2.3%、2019年は1.9%になると予測されています。フランスは、2017~18年は1.8%、2019年は1.7%の成長になるのに対して、イタリアは今年は1.6%の伸び、2018年は1.5%、2019年は1.3%になると見られています。修正値には、雇用率の上昇、金融緩和政策、消費と投資の堅調な伸びを受けて、2017年上半期の実績が以前の予想より良好だったことが反映されています。
英国では、EU離脱の決定を巡る交渉の成果を巡る不確定さと、高いインフレ率が家計の購買力に及ぼす影響が続くため、2018年も成長の鈍化が続くと予測されています。そのため、今年の成長率は1.5%、2018年は1.2%、2019年は1.1%になると見られています。
日本の成長率は、2017年は1.5%と予測されていますが、これは2017年9月のエコノミック・アウトルック中間報告の予測を若干下回っています。2018年、2019年の成長率は1%程度に留まると見られていますが、その要因は、緊縮財政の緩和と生産年齢人口の減少の加速にあります。
カナダ経済の成長率は今年は3%まで回復しますが、景気刺激策が撤回されるため、2018年は2.1%、2019年は1.9%に下落します。
主要新興市場諸国の景気拡大は、中国におけるインフラ投資の更新と、主要商品輸出諸国の景気回復により改善しますが、以前と比べると緩やかな伸びに留まります。
中国の成長率は、2017年は6.8%、2018年は6.6%、2019年は6.4%になると予測されていますが、中国の成長モデルのバランスの回復が進むことが部分的に反映されています。
インドでは、2017年の成長率は6.7%、2018年は7.0%ですが、2019年には7.4%まで上昇するとみられています。これは、投資、生産性、成長を高めると期待される改革の成果です。
ロシアは不景気から回復しつつあり、2017年と2018年は1.9%、2019年は1.5%の伸びになると予測されています。ブラジルも不況から脱するとみられ、2017年の成長率は0.7%、2018年は1.9%、2019年は2.3%になると予測されています。
キャサリン・マンOECDチーフエコノミストは、次のように述べています。「世界経済は低空飛行を続けており、金融不安のリスクを抱えている。唯一の対策は、成長を高め、金融部門のリスクを軽減し、回復力を改善する取り組みのバランスを取る、統合された政策アプローチを追求することである。現在の経済が限界だと自己満足に浸る余裕はない。将来の世代はより良いものを求める権利を持っている。」
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