OECD-パリ、2018年7月12日
現在選択される政策は、将来の生活水準に重要なプラスの影響をもたらす可能性があることが、OECDの長期経済シナリオから明らかになりました。
「長期展望:2060年までの世界経済のシナリオ(The Long View: Scenarios for the World Economy to 2060)」は、通常の短期経済見通しをより長期の見通しに応用して、教育やガバナンス、労働市場政策、製品市場規制といった改革の潜在的なメリットを明らかにしています。それによると、こうした改革は今後数十年にわたって影響します。
大規模な改革を行わない「現状維持」シナリオでは、OECD諸国の生活水準(1人当たりのGDP)は、今後40年間で毎年1.5~2%上昇します。BRIICS諸国(ブラジル、ロシア、インド、インドネシア、中国、南アフリカ)の生活水準の伸びはそれよりは早いものの、過去10年間の年6%という成長率より減速して2060年までは2%を若干上回る程度となり、先進諸国の水準の半分に達しない状態にとどまることになります。
それでも、世界経済の中心はアジアへと移行し続けるため、インドと中国が世界全体の生産に占める割合は上昇します。両国ともそれぞれ世界全体のGDPの20~25%を占めるのに対してOECD諸国のシェアは40%をわずかに上回る程度になります。その一方で、先進諸国では人口構成の変化が生活水準を圧迫し、財政に圧力がかかり、政府は債務を増やさずに医療と年金のニーズを満たすために、税収を平均でGDPの6.5%ポイント増やすことを余儀なくされます。
それに代わる複数のシナリオからは、政策と制度の改革によって将来の生活水準がどの程度改善されるかが明らかになっています。これは、構造改革の影響を数値化したOECDのこれまでの研究を活用したものです。代替シナリオから得られる教訓は、以下の通りです。
- BRIICS諸国には、ガバナンスと教育の成果を改善する余地がまだたくさん残されている。このガバナンスと教育の両要素が2060年までにOECDの平均水準に追いつくと、生活水準は「現状維持」シナリオよりも30~50%高くなる。
- OECD諸国の製品市場規制を、競争を促進している先駆的な国々と同程度にする改革を2030年までに実施すると、全体で生活水準が8%以上向上する。(ベルギー、フランス、イタリア、スペインなど最良慣行から最も遠い国々では15~20%上昇する。)
- OECD諸国の労働市場政策を、先駆的な国々のそれと同程度にまで高めると、2040年までに雇用率が全体で6.5%ポイント上昇するが、そのほとんどは若者と女性の雇用増によるもので、包摂的な社会の促進を後押しすることになる。医療費の上昇を抑える改革と並行して行うことで、将来的な財政圧力が緩和され、政府債務を安定化させるために必要な追加的歳入が半減する。
- すでにいくつかの国々が行っているように、年金受給年齢を平均寿命に連動して引き上げると、OECD諸国の高齢者の平均雇用率は2060年までに5%ポイント以上上昇する。
最後にマイナスのシナリオとして、貿易自由化が逆戻りして1990年の平均的な輸入関税に戻ると、世界全体の平均で長期的な生活水準が14%押し下げられ、最も影響を受ける国々では15~20%下がることになります。
本報告書の詳細は、下記のサイトをご覧下さい。
http://www.oecd.org/economy/growth/scenarios-for-the-world-economy-to-2060.htm.
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
Lawrence Speer (+33 1 4524 7970) in the OECD Media Office.
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