OECD ー 2017年5月10日
国が生産性を向上させる潜在力を完全に引き出そうとするならば、企業は最先端技術、素材、工程の導入を強化する必要があると、OECDの新報告書、『次なる生産革命ー政府と企業にとっての含意(The Next Production RevolutionーImplications for Governments and Business)』は述べています。
開発と実施は主に大企業で起こっていますが、その場合でも、新しいテクノロジーの導入は不十分で、今より遙かに多く寄与する余地があるはずです。
本書は、3Dプリンタの環境への影響から自動デジタルシステム、最新の産業バイオテクノロジーの進歩に至るまで、生産における様々な技術開発が持つ潜在的な効果に注目しています。
政府は、経済成長、生活水準、環境の持続可能性を高めるためにテクノロジーの進歩の潜在力を獲得しなければなりませんが、同時にこの次なる「生産革命」が原因となるリスクと分裂に対応しなければなりません。
政策当局は、新たなテクノロジーと知識を活用するに適した条件を、特に小規模企業の間に創出する上で、主要な役割を果たします。様々な面で行動を起こすことが求められています。その中には、生涯にわたるスキル開発と産学連携の強化の奨励、企業の開業と発展のための条件の改善、企業が先端デジタル技術を使うために必要とするインフラの供給などが含まれます。研究と技術的な規模拡大に対する助成と、技術的イノベーションの拡大を助ける機関の創設なども重要です。
|
|
本報告書によると、先進諸国の中でも技術の普及は遅いか、または限られている場合があります。本書でも引用されている2015年に行われたドイツの4500社を対象とした調査によると、デジタル化、ネットワーク化された生産工程をすでに導入している、または導入する計画がある企業は、わずか4%でした。
新たなテクノロジーの潜在的生産力は、日本の試算から明らかにされています。いくつかの製造業者によるビッグデータとアナリティクスの活用で、保守管理費がほぼ5兆円削減できると述べています。また、500億円以上を省エネによって節減することができます。そして、早期に人工知能(AI)をデータセンターに採用することで、大幅な省エネが記録されています。
ドイツの試算によると、企業が先端情報通信技術(ICT)を利用することで、生産性を5%から8%高めることができます。工業部品の製造業者と自動車メーカーは、生産性を最も大幅に向上させられると期待されています。本書に掲載されているその他の試算から、新たな技術の導入を大幅に加速させれば、ドイツの機械、電機、自動車、化学薬品などの製造業、農業、ICT部門などで、2025年までに付加価値がさらに780億ユーロ増えるとみられています。
多くの企業で、工業生産をデジタル化するために必要なICTの採用が遅れています。企業によるクラウドコンピューティング、サプライチェーン管理、統合業務ソフト、無線自動識別(自動的に工程と物を追跡する)は、ブロードバンドネットワークやウェブサイトの普及には遠く及びません。
本報告書は、生産性を拡大させるテクノロジーが雇用を喪失させる場合と生み出す場合とがあるけれども、これまでのところ、雇用全体、経済全体への影響はプラスであることを明らかにしています。これは、技術的変化によって起こる分裂と、それによって仕事を失う労働者の困難を過小評価するわけではありません。生涯学習に有効な制度の実施と、労働市場が技術的変化の衝撃に対処できるようにすることは、有効な調整政策の中核です。
本日、ローマで行われた本報告書の発表会見でには、イタリアのテレサ・バラノーバ経済開発省副大臣も参加しました。この席でガブリエラ・ラモスOECD首席補佐官兼G20シェルパは、次のように述べました。「“次なる生産革命”は、機会と課題の双方をもたらす。政府は積極的に前向きな政策を取り入れ、変化を予測し、調整の影響を最小限に抑え、この進行中の革命を有効活用すべきである。」
また、本報告書は、2017年5月26~27日にシチリアのタオルミナで開催されるG7先進国首脳会議でも紹介されます。アンヘル・グリアOECD事務総長はこの会議で、成長と発展を牽引するイノベーションの役割と、“次なる生産革命”が開発途上国にもたらす意味合いについて論じる予定です。
本報告書は、下記のウェブサイトで公表しています。http://www.oecd.org/industry/the-next-production-revolution-9789264271036-en.htm
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部メディア課(news.contact@oecd.org tel. + 33 1 4524 9700)までお寄せください。
Also AvailableEgalement disponible(s)
Follow us
E-mail Alerts Blogs