OECD –パリ、2021年11月29日

若者、女性、高齢者は、自分の事業のアイデアを実現する機会が少ないとOECDの新報告書は述べています。こうした人々は、金融、スキル、人との繋がりへのアクセスで問題を抱えており、社会の他のグループの人々よりもベンチャーの立ち上げが困難です。これらの「失われた起業家(missing entrepreneurs)」のために、我々の経済は、アイデア、イノベーション、雇用を失っています。

OECD-欧州連合の新報告書、「失われた起業家2021年版 (The Missing Entrepreneurs 2021) 」によると、もしすべての人々が現在の30～49歳男性と同程度の事業創出に取り組んだ場合、欧州連合（EU）では新規事業を開始、経営する人が900万人、OECD諸国全体では3,500万人増えることになります。これは、EUで初期段階の起業に従事する人々が50％、OECD諸国では40％、それぞれ増加することを意味しています。この差を埋めるためには、起業家の割合が低い社会的グループが抱える障壁に対処する必要があります。これらの「失われた」の起業家の約4分の3は女性で、半数は50歳以上、8人に1人は30歳未満の若者です。

EUでは、若者によるビジネス創出は50歳以上の人々より少なくなっています。2020年にEUで新事業の開始または経営に携わった1800万人のうち、ほぼ4分の1が50歳以上で、18歳から30歳の若者より大きな割合を占めています。若者が起業家としての可能性を実現できるよう支援するには、さらに多くのことを行う必要があります。調査によると、大学生の45％近くが卒業後5年以内に起業する意欲を持っていますが、積極的にスタートアップの活動を行っている人は、18〜30歳の5％に過ぎません。このようにあきらめる人が多いことは、スキル格差を含むいくつかの要因によって説明できます。事業を始めるためのスキルと知識に自信を持っている人は、30歳未満では、50歳以上の人の85％しかいません。

女性は創業において男性よりも消極的です。2016〜20年には、EU地域で創業または創業から42か月未満の企業の経営に関与していた女性は5％未満であるのに対し、男性では8％でした。同様の差はOECD諸国にも見られ、創業と経営に携わった男性が13％であるのに対して、女性は9％です。こうした男女差は、金融市場の障壁、スキル格差、動機に影響を与える制度的条件など、いくつかの要因によって引き起こされます。例えば、OECDおよびEU諸国では、女性がビジネスを始めるために必要なスキルを持っていると答える可能性は、男性を100とすると約75％です。こうした男女差は、経済成長の機会を逃していることを表しています。

 

武内良樹OECD事務次長は次のように述べています。「起業に多様性が欠如していることは、新型コロナウイルスの影響から回復する中で雇用と成長を生み出す機会を逃しているということである。資金調達やスキルへの投資を増やし、様々な起業家の多様なニーズを支援することは、起業を目指す人々に均等の機会を創出するために不可欠である」

本報告書では、包括的な起業政策が、社会的背景や特徴に関係なく、持続可能なビジネスのアイデアを持つすべての人に起業の機会をいかにもたらしうるかを説明しています。この未開拓の可能性を活用することで、新しいアイデアを発見し、雇用を創出し、経済成長に寄与することができ、それが、景気回復の計画の中心となります。

本報告書によると、過去10年間に多くの進歩が見られました。しかし、現在の政策とプログラムは、多様な社会的グループの起業家が抱える障害に必ずしも適切に対処しているとは言えません。

政府が優先すべき3つの事項は次のとおりです。

1. 金融格差への対処：従来型の融資と投資などの金融商品には満たされていない需要がかなりあるため、それを利用できない人々のために設計されたマイクロファイナンスなどを増やす。

2.スキル格差の縮小：例えば女性起業家の自信を高めるといった、様々な人口グループのニーズに合わせた起業家向けトレーニング、コーチングを提供する。

3.適した制度の活用：起業支援システムの制度的バイアスや、女性、移民、若者、高齢者、失業者といった社会的グループが他の社会グループの人々より創業に際して直面する大きな障害、様々な地域的条件に対処する。

 

 “The Missing Entrepreneurs” に関するOECDの活動の詳細、ビデオはこちらからご覧ください。

報道関係者は下記までお問い合わせください。Shayne.MACLACHLAN@oecd.org

 

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