気候変動目標を達成するには排出削減に向けた一層強い政策が必要

 

2015年10月20日

 

先進・新興経済ともに気候変動対策で進展してきてはいますが、ほとんどの国が削減目標には届かないという予測が出ています。最新のOECD分析「気候変動の緩和Climate Change Mitigation: Policies and Progressは、OECD加盟34カ国、欧州連合(EU)およびパートナー10カ国(ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、インドネシア、インド、ラトビア、リトアニア、ロシア、南アフリカ)を対象としており、これらの国々は世界の温室効果ガス(GHG)排出の80%以上を占めています。それによると、各国政府は、取り組みを大幅に加速させる必要があり、そのためには気候変動対策の政策を強化することが重要です。

本レポートによると、今回の対象国の中では、炭素価格制度を構築したり、石炭燃料への補助金を削減したり、グリーン技術の研究開発に投資したり、森林保全、工場・農地・ごみ処理地からの排出を削減したり、という対策に講じる国が増加してきています。上記のほぼ全ての国が国内総生産(GDP)1単位当たりのGHG排出量を減少させています。しかし、それでも気候変動対策の政策のスピードは十分でなく、プレッジから行動に移す必要性を再確認させられます。

サイモン・アプトンOECD環境局長は、「気候変動目標に対するモメンタムは、炭素価格制度構築や排出規制といった対策をより多くの国が採用することで膨らんできてはいるが、設定された目標を達成するためには取り組みを大幅に加速化させる必要がある。各国は、目標達成に必要な政策調整し、世界平均気温の上昇を2℃以内に抑えるという長期目標を達成させるためには時間がなくなってきている。各国政府は、今世紀中に排出量ゼロという目標に達するための政策の道筋を構築しなければならない」と述べました。

 

排出量削減の年間平均(2005-2012年)とポスト2020目標のために必要とされる削減量

* Includes land use, changes in land use and forestry, except for the EU 28.
** Shaded areas show the range of reduction rates needed to meet targets that are expressed as ranges.

 

2015年8月の時点で2020年以降のINDC(各国が自主的に決定する約束草案)を表明した国の中では、アメリカは年間2.3-2.8%GHG削減をしなければポスト2020目標を達成できませんが、2005-2012年の間には年間平均で1.6%しか削減できていません。EUは、年間2.8%削減しなければポスト2020目標を達成できず、2005-2012年の間には1.8%しか削減できていません。

中国とインドは、2020年及び2030年の目標を排出量の対GDP比をベースにしており、絶対値での目標は立てていません。両国のデカップリング率を見ると2020年目標を達成することはできそうだが、中国は2030年目標を達成するにはデカップリングを加速させる必要があります。

OECD加盟国のGHG総排出量は2007年にピークを迎えましたが、2012年の段階で1990年レベルより上で留まっています。エネルギー効率改善や代替エネルギーの活用を通した排出量削減の取り組み効果は、経済成長が回復してきていることや交通へのグローバルな需要が増加していることもあり、部分的に相殺されてしまっています。いくつかの国は、福島原発事故を受けて原子力エネルギー使用を抑制してきており、二酸化炭素の回収・貯留の技術(CCS)を採用することなく化石燃料への転換に進んでいる国すらあります。これらの国に関しては、これまで歴史的に二酸化炭素排出の原因となってきた化石燃料中心の制度からの移行をはかるのに長い道のりがありそうです。

今回調査対象となった新興経済に関しては、1990年度以降のGHG総排出量が大幅に増加しています。これらの国々は異なる政策優先と課題に直面しており、政策策定の際や新たにインフラ構築をする際には、これまで辿ってきた高炭素の道を避けることが重要です。

本レポートに付随している各国詳細データや各国を比較できるData Vizは11月中旬以降に出来上がります。

 

そのほか、今回のレポートの概観としては:

  • GDP1単位当たりのGHG排出量は、調査対象44加盟国のうちインドネシアとトルコを除き全ての国で1990年から2012年の間に減少しました。GDP1単位当たりのGHG排出量は、インドの1.5トンからオーストラリアの24トンまで幅があります。
  • 発電所及び交通を含めたエネルギーは、ほとんどのOECD加盟国においてGHG排出量の70%以上を占めています。調査対象となった44カ国では、2012年には、最も炭素排出が多い石炭が電力発電の45%を占めており、中国、インド、ポーランド、南アに関しては石炭が最大の電力源でした。
  • 調査対象の44カ国の中では、15カ国において、国家あるいはローカルでの炭素税が存在するか計画されていました。
  • 排出量取引制度(ETSs)は、EU、韓国、ニュージーランド、スイス、カナダのいくつかの地域、アメリカのいくつかの州、日本の2都市で存在しました。中国に関しては、一連のパイロットプロジェクトを経て2017年までに全国制度にすることを計画しています。

本レポートは、こちらからダウンロードできます。

本レポートに関する詳細情報、あるいは著者へのインタビューをご希望の報道関係者は、パリ本部ベースのメディア課Catherine Bremer (+33 1 45 24 80 97.) または、東京ベースの報道広報官・川口(naoko.kawaguchi@oecd.org +81 3 5532 0021)までご連絡ください。


OECDの気候変動に対する取り組みについてはこちら

OECDのCOP21に対する取組みについてはこちら

 

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