2015年5月21日
多くのOECD加盟国において所得格差は史上最大レベルに達しており、多くの新興経済においては特に高いレベルを維持しています。OECDによると、現在、OECD諸国の人口の上位10%の富裕層は下位10%の貧困層の9.6倍の所得があり、これは1980年代の7倍、2000年代の9倍からの更なる拡大です。
最新のOECD報告書「格差縮小に向けて(In it together: Why Less Inequality Benefits All) 」はまた、所得よりも人口の上位富裕層に集中しているのは資産のほうであり、これが低所得者層の不利に拍車をかけています。2012年には、比較可能なデータのあるOECD18カ国において、人口の下位40%が総資産のわずか3%しか保有していません。その一方、人口の上位10%の富裕層は総資産の半分を保有しており、上位1%にいたっては総資産の18%を保有しています。
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パリでMarianne Thyssen (European Commissioner for Employment, Social Affairs, Skills and Labour Monility) とともに本報告書を発表したアンヘル・グリアOECD事務総長は、「私たちは崖っぷちに達した。OECD諸国における格差のレベルはデータ開始史上最大になった。高い格差は成長に悪影響をもたらすことはデータが証明している。したがって政策対応は社会だけでなく経済のためでもある。各国政府が格差への対応をしなければ、社会への影響だけでなく長期的な経済成長をも阻むことになる。」
本報告書は、職の形態に関する対応を呼びかけています。パートタイム、契約、自営の割合が増加していることも格差拡大の大きな要因の一つとなっています。1995-2013年の間にOECD諸国で創出された全ての職の50%以上がこのような職業形態でした。特に低い技能を持った契約労働者は、正規労働者に比べ所得はかなり低く不安定です。
最も影響を受けるのは若者です。40%が非典型労働をしており、契約労働者の約半数は30歳以下です。彼らは契約労働からより安定した正規労働に移行する可能性は低くなっています。
もう一つ本報告書が打ち出している主要な課題が、男女格差であり、これを縮小するためにより多くの措置がとられなければならないと指摘しています。就労している女性の人数が増えたことは格差拡大を抑制していますが、それでも女性就労者は男性就労者と比べ有給の職に就いている割合は16%少なく、さらに所得は15%低いです。ただ、働く女性のいる家庭の割合が20-25年前のレベルと同じままだった場合、現在平均でジニ係数がさらに1ポイント高かったことが予測されます。
社会一体性の影響を超え、本報告書は拡大する格差や労働市場における機会の少なさは長期的な経済成長に有害であると強調しています。OECD19カ国で分析された1985-2005年の間の格差拡大を見ると、1990-2010年の経済成長を4.7%ポイント押し下げたことがわかりました。経済全体の成長を抑制する主要因となり得るのが、実は人口の下位40%に影響を及ぼす格差です。格差拡大が続くことに併せて、社会経済的背景の低い家庭は教育やスキルの取得が落ち込むことが示されており、これにより格差が潜在スキルを多く損ね、社会流動性を低めていることがわかります。
OECDの中で格差が最大であるのは、チリ、メキシコ、トルコ、アメリカ、イスラエルですが、その一方で最も低いレベルなのがデンマーク、スロベニア、スロバキア、ノルウェーです。格差は新興経済において上述の最大レベルの国よりも高いですが、ブラジルなどの多くの国では格差縮小も見られています。OECDによると、格差縮小や包括的成長の活性を達成するには、政府は雇用における男女平等を推進し、より良い職へのアクセスを拡大し、ワークライフの中で教育やスキルへのより大きな投資を推進すべきです。
税や給付による再配分は格差縮小の効果的な方策の一つです。最近の数十年では、再配分メカニズムの効果が弱まってきています。これに対応するには、富裕層の個々人のみならず多国籍企業が責任をもって税負担をするような政策が求められます。
カントリーノートは、日本、オーストラリア、カナダ、チリ、フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、韓国、メキシコ、オランダ、スペイン、スウェーデン、イギリス、アメリカに関してこちらのリンクからご覧いただけます:http://www.oecd.org/social/in-it-together-why-less-inequality-benefits-all-9789264235120-en.htm
>> 日本に関する資料(日本語)
報道関係者の方はOECDパリ本部メディア課 (tel. + 33 1 45 24 97 00)までお問い合わせ下さい。
本報告書公表に併せて所得の比較のためのインタラクティブなウェブツールCompare your income を発表しました。ユーザーは所得水準が様々なOECD加盟国においてどれくらいに当たるのかを見ることで実情を比較することが出来ます。このツールはOECD Income Distribution Database の最新データをもとに作成されています。
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