2015年6月17日
最新のOECD研究によると、現代経済でキーとなる要素は金融ですが、金融活動が多すぎても経済成長を阻み所得格差を悪化させます。
最新のOECDレポート「金融とインクルーシブな成長(Finance and Inclusive Growth)」は、異なる種類の金融が今後一層の拡大を続けた場合に経済活動や不平等に与える様々な影響を、過去50年のデータを基に分析したものです。
キャサリン・マンOECDチーフ・エコノミストは、ロンドンで本研究を発表した際、「世界金融危機は、金融が経済活動や所得配分に与える影響に関して大きな疑問を引き起こした。われわれの研究が示したことは、信用膨張を避け、金融構造を改善させれば経済及び社会生活ともに向上させることができるということである。」と述べました。
OECDは、銀行貸出と比べ例えば債券やエクイティなどといった他のタイプの市場型デットファイナンス(借入による資金調達)に頼りすぎることで長期的成長に影響を与えるいくつかのリスクを特定しました。これは、利益率が低いプロジェクトを財政的に支援したり、too-big-to-fail (大きすぎてつぶせない)銀行への暗黙保証のコストを拡大してみせたり、大きな潜在的生産性を抱えたセクターから才能ある労働者を引き離したり、長期的成長を抑制するような景気循環を引き起こしたりすることによる資本の不適切な配分が含まれます。
今日の金融発展のレベルから見ると、民間セクターに対する銀行貸出しを一層拡大すると、大半のOECD諸国において成長を鈍化させることが示されています。OECDによると、中期信頼のGDPに占める割合が10%増えれば、それが無かったケースと比較してGDP成長率は0.3%パーセント・ポイント低いものとなります。
その一方で、株式市場での金融取引がより一層大きくなれば、依然として成長を活性化させると見られています。GDPに占める株式時価総額の割合が10%増えれば、OECD諸国及びG20諸国を合わせた平均で、0.2%のGDP成長を意味します。
バンクローンは、市場型金融よりも経済成長を鈍化させます。その一方で、住宅ローンを主目的とする家計に対する貸出しは、ビジネスへの貸出しよりも成長を抑制する力が強いです。
金融の拡大は、低所得の個人によるプロジェクトをファンドすることを可能とする一方、不平等をもたらす要素でもあります。高所得者は、低所得者に比べより多くを借り入れることが可能である一方、株式市場における成長から来る利益は高所得者により多く流れるからです。同様に、金融セクターは高い給料を支払われますが、これは社会において同様のスキルを持った労働者が支払われるよりも多く、さらに所得格差を拡大させることとなります。欧州では、高所得上位1%のうち20%を金融セクター就労者が占めていますが、同セクターの雇用自体は全体の4%しか占めていません。
OECDは金融セクターがより安定し、強固で公平な成長への健全な貢献が出来るような改革を以下のとおり特定しました。
- 信用膨張を防止するためのマクロプルーデンス政策手段を一層利用する。十分な資本バッファーを維持するための銀行監督。
- ブレークアップ、構造的分離、自己資本の追加賦課、または信用できる解決策などによりtoo-big-to-fail (大きすぎてつぶせない)金融機関に対する暗黙及び明確な補助を削減するような措置。
- エクイティ・ファイナンスに対するタックス・バイアスを削減し、家計に貸し出す場合もビジネスに貸し出す場合もVATを中立にするための改革。
本研究に関する詳細は、こちらのリンク(http://www.oecd.org/eco/finance-growth-inequality.htm)でご覧頂くか、またはOECDパリ本部OECD Media Office (+33 1 4524 9700)にお問い合わせください。
Also AvailableEgalement disponible(s)
Follow us
E-mail Alerts Blogs