教育に関する持続可能な開発目標を2030年までに達成できることがあらゆる国々にとって重要課題である

 

OECD - 9月15日

OECD最新報告書によると、OECD加盟国は、教育に関する持続可能な開発目標(SDG)を2030年までに達成できるようにするという公約の一部として、各国の教育制度の質と公平性を改善する取り組みを強化すべきです。

図表で見る教育2016 (Education at a Glance 2016)」は、今回初めて、各国による「すべての人が公平に受けられる質の高い教育の完全普及と生涯学習の機会の向上」に向けた取り組みを測定しました。データがあるOECD加盟35カ国で、教育に関するSDG目標10項目のうち少なくとも5項目でベンチマークとされた水準に達しているのはわずか12カ国、EU22カ国*の中では6カ国だけでした。

最も高い実績を上げているのはオーストラリアとカナダ、それにオランダ、ベルギーが続き、目標10項目のうち少なくとも7項目を満たしていました。しかし他の国々は大きな問題を抱えています。概して、学習効果の質や生徒と成人のスキルに関する目標を達成するのが難しかったことがわかりました。

ブリュッセルにてティボル・ナヴラチチ欧州委員会教育・文化担当委員とともに本レポートを発表したアンヘル・グリアOECD事務総長は、 「この結果は厳しい現実を突きつけている。世界中の全ての国にとって、質の高い教育、誰で設けられる教育というものが未だに達成できていない課題だということである。教育の効率、質、公平性を改善することが、社会包摂的な成長を促進し、全ての人に公平に機会を与える上で不可欠である」と述べました。

近年、ほとんどの国が教育投資を増やしました。2008年から2013年の間で、OECD諸国で生まれた子供の数が減ったため、生徒数は1%下がりましたが、生徒1人当たりの支出は2008年から2013年で実質値で8%上がりました。生徒と家計の支出も増加しており、特に高等教育ではその増加が顕著で、支出の30%が私的財源によるものでした。2008年から2013年の間で、OECD全体で私的支出総額は14%、EU22カ国では12%上昇しました。より多くの生徒により良く学ぶ機会を与えようと財政メカニズムを創設した国々もありますが、その他の国々では学費を徴収しており、豊かな学生でなければ教育の機会を得られない状態になっています。

多くの若者が教育支出増加の恩恵を未だに実感できていません。OECD諸国全体では、25-34歳の6人に1人が後期中等教育を修了していません。後期中等教育を修了していない若者の失業率は平均17.4%(EUでは21.2%)であるのに対して同年齢層で高等教育修了者の失業率は6.9%(EUは8%)です。

教育における男女格差も依然として残っています。今では男性より女性の高等教育修了者が多いにもかかわらず、科学、技術、工学、数学分野では依然として女性が少ない状態にあります。女性の方が学業を修了して就職することがより困難です。OECD諸国全体で、20-24歳の女性のNEET(ニート、若年無業者)は18.5%ですが、男性は15.5%です。

全教育段階において、移民の生徒は自国生まれの生徒に比べて教育的達成が遅れており、それが、学業を修了して就職することをさらに難しくしています。就学前教育は、子供の認知的、情緒的、社会的スキルを開発する上で非常に重要ですが、移民の子供の就学率は自国生まれの子供のそれを大幅に下回っています。平均すると、25-44歳の移民世帯出身者で両親ともに後期中等教育を修了していない人々の37%が自身も後期中等教育を修了していないことがわかりました。同年齢層で移民出身ではない人々の場合は、27%でした。移民世帯出身の学生が学士または同等の高等教育プログラムを修了する可能性も、自国生まれの学生をはるかに下回っています。

本レポートは、各国が教育への投資から充分な見返りを得ているかという疑問も呈しています。OECDのPISA調査では、好成績を挙げている教育制度はより良い教師に小規模の学級を受け持たせているということが実証されているにも関わらず、政府に対する世論の圧力により、前期中等教育の学級規模は6%縮小しました。学級規模縮小に対する投資が、質の高い教員を採用してそれに見合う報酬を与えるための資源を費消しています。2005年から2014年の間に、後期中等教育の教員給与は、実質平均1%しか上昇しておらず、3分の1の国では減少しました。

「図表で見る教育2016」は、世界各国の教育の現状を測る比較可能な統計を提供するものです。本書はOECD加盟35カ国とアルゼンチン、ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、インド、インドネシア、リトアニア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカの教育制度を分析しています。

 


 

主な結論

学歴

  • OECD諸国平均で、2005-2014年に20-24歳の人々の高等教育就学率は29%から33%に上昇した。OECD諸国の現在の若年成人の36%が30歳までに少なくとも一度は高等教育を修了すると見込まれているが、理論的修了期間に修了する学生は、フルタイムの学士課程の学生の41%に過ぎない。
  • 男女格差は依然として存在している。高等教育修了者に占める女性の割合の方が多い(OECD加盟国全体で初めて学士号を取得する学生の57%)にもかかわらず、科学、工学など特定の分野では女性が少ない状態にあるのに対して、教育分野では、修了する男性1人に対して女性は4人である(2014年)。
  • 後期中等教育を修了している成人と比較した所得プレミアムは、修士号以上を取得している人の場合は91%、学士号では48%、短期高等教育では20%である。しかし女性の場合、高等教育修了の純粋な見返りは、男性の場合の約3分の2である。

教育支出

  • OECD諸国は、初等教育から高等教育までの教育機関に対して、年間生徒・学生1人当たり平均10,493米ドル支出している。初等教育の生徒では1人当たり8,477米ドル、前期中等教育では9,980米ドル、後期中等教育では9,990米ドル、高等教育では15,772米ドルである。
  • 高等教育向け支出はほとんどの国で急増しており、2013年には2005年の水準を29%上回っている。その原因は主にOECD諸国全体で高等教育の就学者数が平均16%と大幅に増加していることにある。
  • OECD諸国は初等教育から高等教育までの教育機関に対して、2012年には国内総生産(GDP)の平均5.2%を支出した。最も少ないのはルクセンブルクの3.5%、最も多いのは英国の6.7%である。

教育の受けやすさ

  • 幼児教育就学率は、2005-2014年のデータがある国では、平均で3歳児の就学率は54%から69%に、4歳児の就学率は73%から85%に上昇している。
  • OECD諸国の若年成人の68%は、現在の大学入学のパターンが続くと、生涯に少なくとも1回は高等教育機関に入学することになる。この平均値は、留学生を除くと61%に、また25歳未満の国内の学生のみでは51%に下がる。
  • OECD加盟諸国だけで見ると、2014年に高等教育機関で就学していた学生の6%が留学生だった。世界全体の高等教育機関の外国人留学生数は、2005年から2012年にかけて50%増加した。

学級

  • OECD諸国の生徒は、初等教育から中等教育までの義務教育期間に平均7,540時間の授業を受けるが、その時間数はハンガリーの5,720時間からほぼ2倍にあたるオーストラリアの11,000時間、デンマークの10,960時間まで、開きがある。
  • 教員の高齢化は、多くの国々で問題となっている。2005年から2014年の間に、データのあるOECD加盟24カ国中16カ国で、50歳以上の教員の割合が増加した。2014年には50歳以上の教員の割合が初等教育では31%、前期中等教育では34%、後期中等教育では38%だった。
  • OECD諸国平均で、教員の3人に2人以上が女性であるが、教育段階が上がるほど、女性教員の占める割合が低くなる。就学前教育では97%、初等教育では82%、前期中等教育では68%、後期中等教育では58%、高等教育では43%である。

 

報告書及び日本を含めた各国のカントリーノート、サマリー、主要データなどはhttp://www.oecd.org/edu/education-at-a-glance-19991487.htm をご参照ください。

 

報道関係者のお問い合わせは、以下までお寄せください。
教育スキル局長 Andreas Schleicher (tel. + 33 1 45 24 93 66)

OECDパリ本部メディア課OECD’s Media Division (tel. + 33 1 45 24 97 00)

 

注記:

* データのあるEU22カ国は、オーストラリア、ベルギー、チェコ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、イタリア、ラトビア、ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、スペイン、スウェーデン、英国。

 

 

 

 

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