若者はデジタル化する世界で苦戦している―PISA2018調査結果

 

OECD諸国の生徒の4人に1人は、最も基本的な読解問題も解くことができず、したがって不安定さを増すデジタル社会において生き抜く方法を見つけるのに苦戦することになります。これは、学校制度の質、公平性、効率を評価するOECDのPISA調査の最新結果から明らかになりました。

OECDのPISA2018調査には、79カ国・地域の15歳の生徒約60万人が参加し、読解力、科学、数学のテストを受けました。今回の焦点は読解力に当てられており、ほとんどの生徒がコンピュータを使って回答しました。

ほとんどの国々、特に先進諸国では、過去10年間に教育機関への支出が15%増えているにもかかわらず、成績はほとんど改善していません。読解力では、北京、上海、江蘇省、浙江省(中国)、シンガポールの点数がその他の国々より有意に高くなりました。OECD諸国中トップだったのは、エストニア、カナダ、フィンランド、アイルランドでした。

 

アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリで開催されている教育の未来に関する会議の始めに行われた本報告書発表会見で、次のように述べました。「正しい教育が実施されなければ、若者は社会の周縁部へ追いやられ、将来の仕事の世界における課題に対処できず、不平等が拡大し続けることになる。教育への投資1ドルは、社会経済的進歩という観点から莫大な見返りを生み出し、あらゆる人々にとって包摂的で豊かな未来の基礎となる。」

非常に基本的な読解力しかない生徒の割合を見ると、先進諸国を含む国々が国連持続可能な開発目標の達成、特に「包摂的で公平な良質な教育の確保と万人への生涯学習の機会の促進」との関連において抱えている課題が浮き彫りになります。男女とも、成績の悪い生徒の割合は平均すると、前回読解力が焦点となった2009年から今回の2018年の間に増加しました。

生徒の幸福度の問題も、重要性が高まっています。OECD諸国の生徒の約3人に2人は幸福だと答えていますが、満足していると答えた生徒の割合は2015年から2018年の間に5ポイント下落しました。そして、ほぼ全ての国々で、女子の方が男子より失敗を恐れており、その差は成績最上位者の間で最も大きくなりました。OECD諸国全体で生徒の4人に1人が、一カ月に少なくとも数回のいじめに遭ったと報告しています。

OECD諸国の生徒10人に約1人、シンガポールの生徒の4人に1人が、読解力で最高水準の成績に達しています。しかし、社会経済的に恵まれている生徒と恵まれていない生徒との格差は明白です。OECD諸国の最も豊かな10%の生徒の読解力は、最も貧しい10%の生徒のそれより約3学年分進んでいます。フランス、ドイツ、ハンガリー、イスラエルでは、その差が4学年分です。

しかし中には、過去数年で目覚ましく改善した国もあります。ポルトガルは、金融危機で深刻な打撃を受けたにもかかわらず、ほとんどのOECD諸国と同じ水準に達しました。スウェーデンは、2012年まで成績が下落傾向にありましたが、それ以降3科目とも改善しています。トルコも、学校に通う15歳の生徒の数を2倍に増加させると同時に成績も改善させています。

最新のPISA調査結果からは、デジタル技術が学校外の世界をどの程度変革しているかということも明らかになっています。2009年の結果と比較して、今回は、読書を時間の無駄と考える生徒が増えており(+5ポイント)、男女とも読書を楽しいと答えた生徒は減少しています(−5ポイント)。また、平日に学外でオンラインを利用する時間数は3時間で、2012年の調査より2時間増加、週末では3.5時間増加しました。

 

その他の主な結論は、下記の通りです。

科学と数学の成績

OECD諸国平均で生徒の約4人に1人が、科学(22%)または数学(24%)の基礎レベルを身につけていない。これは、例えばある価格を他の通貨に換算できないということである。

北京、上海、江蘇省、浙江省(中国)の生徒の約6人に1人(16.5%)と、シンガポールの生徒の7人に1人(13.8%)が、数学において最高水準の成績だった。OECD諸国全体では、このレベルに達した生徒はわずか2.4%だった。

教育の公平性

オーストラリア、カナダ、デンマーク、エストニア、フィンランド、日本、韓国、ノルウェー、英国では、生徒の成績はOECD平均を上回ったが、読解力と社会経済的状況との関係は非常に弱かった。つまり、これらの国々の教育制度が、生徒がその出自に関係なく活躍できる最も公平なものだということである。

45カ国の恵まれない環境にある学校の校長は、教育を受けた教職員が不足しているため学習の水準に影響していると答えた。42カ国では、教材の不足と乏しいインフラも学級での成功を制約する主な要因となっていた。

OECD諸国平均で、2018年には生徒の13%が移民家庭の出身で、その割合は2009年の10%より上昇した。移民の生徒は平均すると読解力がそうでない生徒よりも低く、約1学年分の差がある。しかしオーストラリア、ヨルダン、サウジアラビア、シンガポールなどの国々では、移民の生徒の点数はそうでない生徒より高いか、または少なくとも同程度であった。

男女差

OECD諸国平均で、読解力は女子の方が男子より有意に成績が良く、その差はほぼ1学年分に等しい。世界全体では、男女差が最も小さかったのはアルゼンチン、北京、上海、江蘇省、浙江省(中国)、チリ、コロンビア、コスタリカ、メキシコ、パナマ、ペルーである。男子は数学では女子よりわずかに成績が良かったが、科学では女子より劣っていた。

男子生徒と女子生徒では将来の職業について非常に異なる期待を抱いている。成績上位の男子の4人に1人以上は、エンジニアや科学者になりたいと答えたのに対して、女子で同様の答えをした人は6人に1人未満である。成績上位の女子のほぼ3人に1人が医療関連の専門職に就きたいと答えたのに対して、男子で同様の答えをしたのはわずか8人に1人である。

 

本書と、国別分析、サマリー、データは、下記のサイトで公開しています。

www.oecd.org/pisa  

日本語サマリーはこちらからお読みいただけます。 

 

報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。

OECD Media Office (tel. + 33 1 45 24 97 00).

 

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