2019年5月20日-中小企業は近年、情報通信技術(ICT)のような高成長産業を含む新規開業により雇用の伸びに大きく貢献しています。しかし、OECDの新報告書、「OECD中小企業・起業アウトルック (OECD SME and Entrepreneurship Outlook) 」によると、中小企業による雇用創出のほとんどが見られるのは、生産性の水準が平均を下回る部門であり、また中小企業の賃金は大企業のそれより約20%少ないのが一般的です。
中小企業は大企業と比べて新しい組織慣行、市場慣行を取り入れていることが多く、場合によっては新製品や新規の工程の開発においてもより革新的ですが、多くはテクノロジーと市場の複雑さが増す中で経営の舵取りに過度に苦慮しています。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、OECDフォーラム中に行われた本報告書の発表会見で、次のように述べました。「我々は中小企業・起業政策を根本から見直し、事業環境と資源の利用性を改善する必要がある。それによって、小規模企業の雇用主でもデジタル化のようなトレンドの変化を生かせるので、労働者はより高い賃金を得て生産性を高めることができる。我々は、国、地方、都市が多種多様な数多くの小規模企業を包摂的で持続可能な成長を牽引するものとして十分に生かす方法を理解するために、政策とその成果の測定方法を見直す必要がある。」
本報告書は、中小企業の実績と政策についての独自のデータと実証を初めてまとめたもので、政策当局に新しいベンチマークツールと、各国の中小企業・起業政策を構成する一助となるグッドプラクティスについての考察を収録しています。本報告書では、中小企業は大企業と比較してビジネスエコシステムと政策環境への依存度が高いとして、下記を含む主な課題を特定しています。
- 輸出に従事する中小企業の賃金格差は比較的小さいが、貿易障壁は過度に大きく、最近の貿易摩擦が中小企業がグローバル化の恩恵を受けるのをさらに妨げる可能性がある。
- 中小企業は様々な種類のイノベーションを組み合わせることに苦慮しており、スキル、資金、知識といった戦略的資源の利用においては、規模の障壁に相変わらず直面している。EU諸国の中小企業の4分の1は、技能を身につけた雇用者と経験豊富な経営者の不足を最も深刻な問題として訴えており、ほとんどのOECD諸国で、2018年にICTの訓練を従業員に提供したのは小規模企業全体の4分の1未満であった。
- デジタル転換は、生産性を伸ばす余地を提供しているが、大規模企業と比べるとデジタル技術の採用に大きな格差がある。例えば、OECD諸国の小規模企業で2016年にクラウドコンピューティングサービスに投資した企業は全体の半数だった。
政府は、中小企業の基礎条件を改善し、規模の障壁に対処することに積極的に取り組んでいます。本報告書に収録されている36カ国の国別レポートによると、OECD諸国政府は、中小企業へのイノベーションの普及を加速させ、中小企業がデジタル転換に遅れずついて行かれるようにし、中小企業のスキルを向上させ、イノベーションネットワークと多国籍企業と中小企業とのつながりを拡大し、製品市場、公共調達、「最先端の(lead)」イノベーション市場において平等な競争条件を設定することに注力しています。小規模企業は、電子政府サービスの強化からも、OECD諸国で行われている行政負担と税負担の軽減とスマート規制の強化を目的とした改革からも恩恵を受けています。
こうした取り組みにもかかわらず、複雑な規制手続きは依然として中小企業と起業家にとって大きな障害となっています。さらに、構造改革のペースが近年遅くなっており、また進捗状況は開業と中小企業投資の鍵を握る破産制度、民事司法、競争法の執行といった分野において依然として一様ではありません。
本報告書では、効率性の高いガバナンス、国、地方、都市レベルでの一貫性の高い取り決めなどについて論じています。また、国際的なピアラーニングの促進とモニタリング、評価能力の拡充を呼びかけています。
報告書全文はこちらからお読みいただけます。
詳しくは、下記のウェブサイトをご覧下さい。
http://www.oecd.org/cfe/smes/
http://www.oecd.org/sdd/business-stats/
日本語サマリーはこちらからお読みいただけます。
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
Carol Guthrie in the OECD Media Office (+33 1 45 24 97 00).
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