OECD - パリ、2017年10月18日
OECDの新報告書、『高齢者の不平等を避けるには(Preventing Ageing Unequally)』によると、高齢になってからの不平等のリスクは、現在すでに退職している人々よりももっと若い世代の方が大きくなり、また1960年代以降に生まれた人々が高齢になったときの状況は劇的に変化するとみられています。さらに、家族の規模が小さくなり、職業人生全般における不平等がより高くなり、年金額を削減する改革が行われたことで、一部の人々が貧困に陥るリスクが高まっています。
本報告書によると、1980年には、OECD平均で勤労世代100人に対して65歳以上の高齢者は20人でした。それが2015年にはその数は28人に上り、さらに2050年にはほぼ2倍の53人に達すると予測されています。多くのOECD諸国と新興諸国では、高齢化がより速いペースで進みます。それと同時に、世代が進むにつれて不平等は拡大しています。格差は、職業人生が始まったばかりの人々の間では、現在の高齢者の間よりもすでに大幅に広がっているのです。
将来高齢者になる人々が置かれる状況は、今よりも多様になるとみられています。長寿にはなりますが、職業人生のどこかで失業を経験したり低賃金になったりする人が増える一方、より高く、安定した収入を享受できる人々もいます。
本報告書によると、教育、医療、雇用、所得の不平等は、早い段階から高まり始めます。25歳の大卒男性は同年齢のより低学歴の男性よりも、平均余命ががOECD諸国平均でほぼ8年長くなります。女性の場合、この差は4.6年です。あらゆる年齢において、健康状態が悪い人々の労働時間はより短く、収入も減ります。キャリア全般をみると、不健康であることは、低学歴の男性の生涯賃金を33%減らしますが、高学歴の男性の場合はその損失は17%に留まります。
低所得者の方が高所得者よりも寿命が短くなる傾向があり、年金額をさらに減らすことになります。退職年齢の引き上げは、年金全体において低所得者と高所得者との不平等を拡大する傾向がありますが、その影響は小さいものです。しかし、高齢者の男女不平等はかなり残る可能性があります。現在65歳以上の人々への年間の年金支給額は、平均すると女性の方が27%少なく、高齢者の貧困は、男性よりも女性の方がリスクが遙かに高くなります。
高齢者の不平等問題は新興諸国の方が深刻で、ブラジル、中国、インドなどでは発展の比較的早い段階から急速な高齢化に直面し、OECD諸国よりも健康格差が大きく、社会的セーフティネットの有効性において劣っています。
こうした問題に対処するために、OECDは諸国が以下の3分野に焦点を当てたライフコース・アプローチを採るべきです。
不平等が時間とともに拡大するのを防ぐ。その方策には、良質な早期幼児教育・保育の提供、恵まれない境遇の若者の雇用支援、リスクが高い社会的グループを対象とする医療支出の拡大などを含めるべきです。
不平等の固定化を抑制する。医療サービスをもっと患者本位のアプローチにし、雇用サービスは失業者の職場復帰を支援する取り組みを強化するとともに、高齢労働者の雇用維持と新規雇用を妨げる要因を取り除くべきです。
高齢者の不平等に対処する。退職後所得制度の改革では、高齢者の間にある不平等を取り除くことはできませんが、軽減することはできます。適切に策定された最上位の年金は、寿命における社会経済的差異が年金受給額に及ぼす影響を抑えることができます。一部の国々は、特に女性の年金の妥当性リスクを抱えています。在宅ケアを安価にし、非公式の介護者により良い支援を提供することも、長期介護における不平等の削減に貢献します。
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部メディア課(news.contact@oecd.org / tel. + 33 1 4524 9700)までお寄せください。
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