2015年10月5日
OECDは本日、10月8日にペルーのリマで開かれるG20財務大臣会合の討議資料となる包括的かつ整合的で調整の取れた国際租税ルール改革に関する措置の最終パッケージを提示しました。OECD/G20の税源浸食と利益移転(BEPS)プロジェクトは、企業が利益を「消失」させたり、経済活動をほとんどあるいは全く行なっていない無税又は低税率の国・地域に人為的に利益を移転させたりすることを可能にしている、既存の国際ルールの隙間を塞ぐための解決策を各国政府に提示します。
BEPSによる税収の損失は、控えめに見積もっても年間1,000~2,400億米ドル、世界全体の法人税収の4~10%に達すると推計されています。開発途上国では税収のより多くの部分を法人税収に依存していることを考えると、BEPSが開発途上国に与える影響は特に大きいといえます。
「税源浸食と利益移転は、経済的な側面だけでなく、信頼の問題としても、全ての国に影響を及ぼします」とOECDのアンヘル・グリア事務総長は述べました。さらに、「BEPSは、成長の活性化や、世界的経済危機の影響への対処、全ての人々のためのより多くの質の高い機会創出などのための貴重な資源を各国から奪っています。しかし、それ以上に、BEPSは世界的に租税制度の公平性に対する市民の信頼を損なっています。OECDが本日提示する措置は、ここ1世紀ほどの間において、国際租税ルールに対する最も抜本的な変革です。これらの措置は、二重非課税に終止符を打ち、課税と経済活動及び価値創出との一致を促すものであり、それらが十分に実施されれば、BEPSを引き起こしているタックスプランニングの仕組みを無効化することになります」と述べました。
BEPSに対処する作業はG20首脳の要請を受けて行われたものであり、国際的租税回避に終止符を打つための15の行動を特定した2013年のG20/OECD「BEPS行動計画」に基づいています。この計画は、越境活動に影響を及ぼす国内ルールへの整合性導入、課税と経済活動及び価値創出との一致を確保するための既存の国際基準における実体要件の強化、企業・政府の透明性及び確実性の改善という3つの基本的な柱に沿って組み立てられました。
OECDは、トルコのジェヴデット・ユルマズ副首相を議長として10月8日にペルーのリマで開かれるG20財務大臣会合にBEPS対抗措置を提出します。
BEPS措置が11月15~16日にトルコのアンタルヤで開かれるG20首脳会議に提出されると、焦点は、全ての関心を有する国・地域が対等な立場で参加するよう招請されるような、BEPSを監視し対抗措置の実施を支援するための包括的な枠組みの設計及び導入へと移ります。
BEPS対抗措置の最終パッケージには、国別報告(税務当局に初めて多国籍企業のグローバルな事業の全体像をもたらす)、条約漁り(投資チャネルとして導管会社を利用することに終止符を打つ)、有害な税慣行の抑制(特に知的財産分野における抑制やルーリングの自動的交換を通じた抑制)、効果的な相互協議手続(二重非課税の防止が結果的に二重課税を生じさせないようにする)などに関する新たなミニマム・スタンダードが含まれています。
また、BEPSパッケージは、移転価格ルールの適用に関する指針を改定し、納税者がいわゆる「キャッシュボックス」事業体を利用して無税又は低税率の国・地域に利益を避難させることができないようにするとともに、恒久的施設(PE)の基本概念を再定義し、従来の定義の下で課税対象となる存在の創出を回避してきた取決めを抑止します。
BEPSパッケージは、外国子会社合算税制(CFC)に関するルールの強化、利子控除を通じた税源浸食を制限する共通のアプローチ、ハイブリッド・ミスマッチ取決めが複雑な金融商品を利用して税務上の利益を消失させることができないようにするための新たなルールなど、国内法の改正を通じて実施される一連の新たな措置を各国政府に提供します。
およそ90カ国が、租税条約関連のBEPS対抗措置を既存の二国間条約ネットワークに組み込むことを可能にする多国間協定の策定に連携して取り組んでいます。この協定は、2016年に全ての関心ある国々による署名のために開放される予定です。
BEPS対抗措置は、OECD、G20及び開発途上国並びに企業、労働界、学界、市民社会団体などの利害関係者による2年間の透明性の高い集中的な協議を経て合意されました。
「税源浸食と利益移転を転換させることには、全ての人が利害関係を有しています。BEPSプロジェクトは、全ての利害関係者が変化をもたらすために結集できることを示しています。各国政府による迅速な実施は、ほんの一握りの人たちのためではなく、全ての人のために、より確実で持続可能な国際課税の環境を確保するという利益をもたらすことに繋がるでしょう」とグリア事務総長は述べました。
2015年解説文(Explanatory Statement)、2015年BEPS報告書、バックグラウンド情報、FAQなど、OECD/G20の税源浸食と利益移転プロジェクトに関する詳細な情報ついては、www.oecd.org/tax/beps.htmを参照ください。
メディア関係者による問い合わせは、パスカル・サンタマンOECD租税政策・税務行政センター局長(+33 6 2630 4923)またはOECDメディア局(+33 1 4524 9700)までお願いします。
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