経済回復は継続しているが、不均衡のリスクが拡大していると警告-OECD Economic Outlook

 

OECD - 2021年12月1日 

最新のOECDエコノミックアウトルックによると、世界経済の回復は続いているものの勢いが弱まり、不均衡が拡大しています。迅速かつ効果的なワクチン接種が世界的に実施できなかったことで、ウイルスの新たな変異種が次々と出現しているため不確実性が高くなり、コストがかさんでいます。

ほとんどのOECD諸国の生産高は現在、2019年後半の水準を超え、パンデミック前に予想されていた軌道に徐々に戻りつつあります。しかし、低所得国、特に新型コロナウイルスに対するワクチン接種率がまだ低い国々は取り残される恐れがあります。

本アウトルックでは、世界経済の成長率は、今年は5.6%、2022年は4.5%と回復し、2023年には3.2%とパンデミック前に近い水準に落ち着くと予測しています。

多くの先進諸国では、今年始めに力強い経済活動の回復が見られましたが、それが勢いを失いつつあります。経済の再開以来、財に対する需要が急増し、それに供給が追いついていないため、生産チェーンに障害が発生しています。労働力不足、パンデミックによる閉鎖、エネルギーや商品価格の上昇、一部の主要材料の不足などにより成長が妨げられており、それがコスト圧迫要因となっています。一部の地域では、回復の初期段階でインフレ率が大幅に上昇しています。

 

© OECD Economic Outlook - December 2021: Real GDP growth projections

 

製造業の供給障害や食品価格の上昇によるコストの上昇、さらにエネルギー市場の不均衡が、すべての経済圏でインフレを引き起こす重大な要因となっています。欧州を中心にガス価格が高騰しており、リスクも高く、貯蔵量は例年のこの時期に比べて約28%も下回っています。食費とエネルギー費用の上昇は、低所得層に最も大きな打撃を与えています。

インフレ圧力は、数か月前に予想されていたよりも強く、持続することがわかっています。現時点では、OECD諸国の消費者物価上昇率は、2022年に入ると主要な障害が緩和され、生産能力が拡大し、より多くの人々が労働力として復帰し、需要の均衡がとれるにつれて、緩やかになると予測されています。本アウトルックでは、新型コロナウイルスのさらなる感染拡大に伴う供給の混乱が継続することで、インフレ圧力が長期化、上昇するリスクがあると強調しています。

また、最近のオミクロン株の出現で明らかになりましたが、新型コロナウイルスによる医療の逼迫でさらなる制限が課せられ、回復が危ぶまれるというリスクもあります。本アウトルックによると、低所得国においてワクチンを接種しやすくすることを、緊急の政策課題にしなければなりません。ワクチンの世界的な展開をより迅速かつ適切に調整することは、人命救助と変異株の出現を防ぐために不可欠であるだけでなく、工場、港湾、国境の完全な再開を可能にすることで復興の力を削ぐ障害が解消されることにもつながります。

中国では、大手不動産開発業者の財務健全性が懸念されており、不動産市場の活動が急激に低下した場合、急速に景気が後退する恐れがあり、世界的な景気回復も阻害される可能性があります。特に世界の金融市場に不確実性が生じ、現在の供給障害に拍車がかかれば、このような景気後退の影響は他の国々にも急速に広がることになります。

本日、マティアス・コーマンOECD事務総長は、ローレンス・ボーンOECDチーフエコノミストとともに、経済見通しの発表会見に臨み、次のように述べました。「これまでに見られた力強い回復が緩やかになり、供給障害、インフレ率の上昇、パンデミックの継続的な影響などで見通しが不透明になっている。オミクロン株の出現にみられるように、リスクと不確定要素は大きく、不均衡に拍車をかけ、回復を脅かしている。回復を力強く維持し、軌道に乗せるためには、いくつかの不均衡に対処する必要があるが、何よりも、国際的な調整を強化することで健康危機を管理し、医療制度を改善し、世界中でワクチン接種プログラムを大幅に強化する必要がある。」

ローレンス・ボーン氏は次のように述べています。「各国政府は危機の最中、人々や企業を支援するために迅速かつ効果的に行動した。しかし、まだ仕事は終わっていない。ワクチンの普及に関する国際的な調整が行われていないため、我々全員が危険にさらされている。医療制度の見直し、インフラ投資、学校教育の遅れを取り戻せるような子ども支援、変化する世界で人々が必要とされる仕事に就けるように職業訓練を受けさせるという野心的な戦略の導入など、危機からの教訓を学び、未来への投資を行うことが重要である。政府は、公的資源の活用方法を見直さなければならない。潜在成長率を高め、クリーンエネルギーへの移行を加速させるために、より賢明な支出をしなければならない」

本アウトルックによると、パンデミック関連の政府支援の廃止は、経済活動の低下を避けるために段階的に行う必要があります。しかし、公共投資のレベルを上げられる余地を確保し、気候変動対策として深い経済的変化に適応するためには、支出構成を変化させる必要があります。市場の信頼と国民の支持を維持するには、財政金融当局による政策戦略の明確な指針が不可欠です。

 

本アウトルックの全文および詳細情報は、Economic Outlookのウェブサイトをご覧ください。

報道関係者のお問い合わせは下記までお願いいたします。OECD Media Office (+33 1 4524 9700)

 

OECDは、世界100か国以上と協力して、個人の自由を保護し世界中の人々の経済・社会的幸福を向上させる政策を推進する、グローバルな政策フォーラムの役割を担っています。

 

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