2017年1月16日- OECD、パリ
高額な薬剤の急増と薬価の上昇が、公的医療支出を圧迫し、医薬品業界の価格戦略に疑問を投げかけています。政府は業界と規制当局と協力して、この新しい医療技術の開発と利用に対する新たなアプローチを設定する必要があります。新しい医療技術はイノベーションを奨励しますが、その一方で、より安価で費用対効果の優れた治療をもたらすものでもあります。
『新しい医療技術:その利用性、価値、持続可能性を管理する(New Health Technologies: Managing Access, Value and Sustainability)』 によると、薬剤費に占める高額な薬剤への支出が増加してきています。がんや奇病の治療薬の上市価格は上昇しており、患者への医療給付がそれに伴って増えていない場合もあります。例えば、投薬による延命1年ごとのがん治療薬の上市価格は、過去20年足らずの間に4倍(実質値)になり、今では20万米ドルを超えています。
保険業者や公共医療機関といった薬剤費を支払う側もまた、非常に限られた人口のために高額な薬剤費を支払うことに苦慮しており、これは今後高精度治療の発展とともにますます増えると見られています。それに対して、肝炎の新治療法は非常に効果があり長期的にはコスト効率も高いものの、対象となる人口が幅広く、予算への影響が大きいため、ほとんど全てのOECD諸国でその恩恵を受けるであろう多くの人々は購入できません。
技術に対して支払われる価格には、代替治療と比較した実際の医療効果が反映されなくてはならず、またその効果に関する実証に基づいて、調整されなければなりません。薬剤費を支払う側は、価格を調整し効果のない技術に対する支払いを拒否する権限を有していなければなりません。
薬剤費を支払う側と製薬会社との交渉における力関係のバランスを取り戻す必要があると、本報告書は述べています。これは透明性を高め、また欧州と南米で試験的に行われている薬剤費を支払う側と国際共同購買イニシアチブとの間の協力を強化することで、可能になります。薬価合意は薬剤の最終価格をその実際の効果とを結びつけるもので、イタリアと英国ですでに導入されていますが、これも運営コストを管理し、また集めた医療データと証拠を医療関係者が広く利用できるようにするならば、効果があるでしょう。
本書は、1月17日からパリで行われる「次世代の医療改革」に関する 保健大臣会合 で議論されるもので、この他にも新たな医療技術の採用に関わるその他の課題に焦点を当てています。HIV/AIDSや結核といった顧みられない疾患の治療、抗菌薬耐性、認知症対策への研究開発投資は、収益性が低いため、関心を引きにくくなってきました。 これらの分野への民間投資を促すインセンティブを強化する必要があります。
今日、多くの生物医学技術が、その安全性と効果について限られた証拠しかないにもかかわらず承認、採用されています。それが実際に効果があるか、評価が行われることはまれです。これは安全性を損ね、無駄で、もはや持続可能ではありません。
また、医療データの可能性をもっと効果的に活用する取り組みも求められています。個人の医療データを利用することで、医療制度を改善し疾病調査を行う大きな機会が得られますが、プライバシーのリスクを管理しつつこれらの便益を実現するためには、正しいガバナンス枠組みが必要です。
報道関係者のお問い合わせは下記までお願いいたします。
Valerie Paris, Senior Policy Analyst at the OECD’s Health Division and main author of the report (tel. + 33 1 45 24 80 29).
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