OECD-パリ、2022年5月24日
OECDの新報告書によると、世界経済が回復し、多くの国々がパンデミック対策として実施した措置を撤回または縮小し始めたため、2021年には賃金に対する実効税率が回復しました。
「賃金課税2022(Taxing Wages 2022)」によると、2021年に家計所得が増加し、パンデミック関連の多くの税制・給付政策が撤回されたため、OECD諸国全体で賃金に対する実効税率が上昇しました。これは、2020年にパンデミックにより賃金税のくさび(雇用者と雇用主双方が支払う賃金税の合計から家族手当を差し引いた金額が雇用主の労働コストに占める割合)が大きく減少しましたが、その後回復していることを表しています。
本報告書では、多くの国々がパンデミック期に家計を支援するために導入した施策を撤回または縮小したため、2021年にOECD諸国の大半で税のくさびが上昇したと指摘しています。この上昇にもかかわらず、2021年に新たな新型コロナ関連支援策が導入された少数の国々で税のくさびが比較的大幅に下落したため、OECD諸国全体で見ると税のくさびの平均はわずかに減少しています。
ほとんどの国々で、2021年の税のくさびの上昇は、多くの世帯タイプで2020年に記録された急激な下落を相殺して余りあるもので、税のくさびはパンデミック前の2019年より高い水準に回復していることが確認されました。平均賃金の100%の収入がある働き手が一人で子供が二人いる夫婦の世帯と、平均賃金の67%の収入があり子供が二人いるひとり親世帯の場合、21カ国で2019年より2021年の方が税のくさびが大きくなりました。
平均賃金の100%の収入がある働き手が一人で子供が二人いる夫婦の税のくさびの平均は、2019~21年に1.2ポイント下落しましたが、平均賃金の67%の収入があり子供が二人いるひとり親世帯のそれは1ポイントの下落にとどまりました。いずれも、子供のいない独身労働者世帯の税のくさび(0.3ポイント下落して34.6%)の下落幅より大きくなっていました。
2020年から2021年にかけて、OECD加盟38カ国のうち24カ国で独身労働者の税のくさびが上昇、12カ国で下落、2カ国で横ばいとなりました。税のくさびが1ポイント以上上昇したのは、イスラエル、米国、フィンランドで、1ポイント以上下落したのは、オーストラリア、ラトビア、ギリシャ、チェコでした。この種の世帯で税のくさびが上昇したほぼすべての国々で、その上昇を後押ししたのは個人所得税の増加でした。平均賃金の上昇が累進課税制度と関連しているためです。
2020年から2021年にかけて、働き手が一人で子供が二人いる世帯の税のくさびは27カ国で上昇、10カ国で下落、1カ国で横ばいとなりました。1ポイント以上上昇したのは10カ国で、最も大幅に上昇したのはリトアニア、オーストリア、カナダでした。1ポイント以上下落したのは5カ国でした。中でも下落幅が最も大きかったのはチリ(25.5ポイント)でしたが、これは新型コロナ対策の一時支援策である「緊急家族所得(Emergency Family Income)」によるものです。
独身労働者と働き手が一人で子供がいる夫婦世帯の税のくさびのOECD平均の差は、2020年から2021年にかけて0.36ポイント拡大し、10.2ポイントになりました。
Taxing Wages 2022は、雇用者が支払う所得税、就労中の家族が受け取る現金給付とそれに関連する社会保険料、雇用者と雇用主双方が支払う給与税(雇用保険料)について、他では得られないOECD諸国の比較データを提供しています。こうしたデータは、個人が雇用の選択肢を検討し、企業が雇用を決定する際の重要な要素です。
本報告書では、これらの税の計算方法を解説し、それが家計所得に与える影響を検証しています。所得水準と世帯構成(独身者、ひとり親、共働き、子供の有無)が異なる8種類の世帯を対象に、労働コスト、税、給付の全体像を国別に比較することができます。
2022年版では、新型コロナのパンデミックに関連した経済的ショックに賃金税がどのように対応したかを特集しています。特に、2020年、2021年の平均賃金の傾向や、パンデミックに対応した税制、給付制度の変更など、主要指標の変化を促した要因に注目しています。その中には、個人所得税、社会保険料、給与税(雇用保険料)、労働者に支払われる現金給付の変更が含まれています。
詳細情報および個々のカントリーノートは、下記ウェブサイトでご覧いただけます。
https://oe.cd/taxingwages
報道関係者のお問い合わせは下記までお願いいたします。
David Bradbury, Head of the OECD’s Tax Policy and Statistics division (+33 1 4524 1597), or to Lawrence Speer (+33 1 4524 7970) in the OECD Media Office (+33 1 4524 9700).
本報告書の埋め込み可能なデータ画像は、下記ウェブサイトでご覧いただけます。www.compareyourcountry.org/taxing-wages
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