OECD、パリー2019年5月20日
急速な経済発展と気候変動によって自然災害危険度が高まる中、OECDと世界銀行の共同報告書は、自然災害の財政費用を災害が実際に発生する前に管理する必要性を訴えています。
パリで開催中のOECDフォーラムで発表された本報告書、「自然災害に対する財政回復力(Fiscal Resilience to Natural Disasters)」によると、先進諸国、新興諸国が過去10年に負担した自然災害の損害と経済的損失は、およそ1.2兆米ドル、その前の10年間にかかった費用の2倍を上回ったと推計しています。近年の災害で多くの人命が失われましたが、それに加えて、2010年のチリ、2011年のニュージーランドの地震では、それぞれ年間GDPの10%、20%のコストがかかりました。2011年の東日本大震災では、津波と原発による被害が同年の1四半期には2%の景気後退につながりました。
マルコス・ボンチュリOECD公共ガバナンス局局長は、OECDフォーラムで行われた本報告書の発表会見で次のように述べました。「中央政府が災害費用の大半を負担している。特に民間の災害保険市場が十分に発達していない国々ではそれが顕著である。事前に責任分担を明確化し財政支援に関する条件をより透明性の高いものにしておくことで、政府はその費用を制御、制限することができ、実際に災害に遭っても回復が容易になる。」
本報告書では、政府にとって最も重大な災害費用の要因を明らかにしています。中でも最も費用がかかるのが、公共インフラ資産への損害とそれに関わるサービスの途絶で、これらは制御がもっとも困難なものでもあります。また本報告書では、こうした費用の多くが準政府機関、国有企業、インフラ資産とサービスを所有または運営している提携業者などからの請求で発生していることも明らかにしています。
災害発生後の支援についてのルールが詳細に決まっていないと、政府が負担する災害費用の割合は高くなります。極端な災害に対してはその都度対応することになり、その結果損害補償額が大きくなって、政府を圧迫します。
OECDの報告書によると、各国政府は災害関連の偶発債務をもっと効率的に制御できるようにすべきです。費用の分担方法を含め、災害支援についてのルールを明確にすることで財政リスクからの回復力を高めることができます。
本報告書では、災害が起こった後、政府は将来的な損害を削減するように設計された再建案に対して財政支援を与えるという条件を出すよう推奨しています。例えば、ある資産について繰り返し損害請求が行われている場合、それに対する金銭的保障を減らす措置をとっている国があります。
アルフォンソ・ガルシア・モラ世界銀行金融・競争力・イノベーション局局長は、次のように述べています。「災害への対応の仕方にはどの国にもそれぞれの課題がある。共通の課題は様々な災害復興策の可能性を高めることで、それらは安定した市場、強靱な制度、国際協力、そして財政の回復力を高めるイノベーションと技術力に左右される。」
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