OECD-パリ、2019年7月1日
世界各国政府は、毎年5000億米ドルを超える農業助成を農家に対して行っていますが、それらは有効ではなく貿易を歪める場合が多く、こうした政策の改革努力の大部分は行き詰まっています。
OECDの新報告書「農業政策のモニタリングと評価 2019年版(Agricultural Policy Monitoring and Evaluation 2019) 」によると、本書の対象となっている53カ国-OECDとEUの全加盟国と主要新興諸国12カ国-は、2016年から18年の間に、年平均5280億米ドル(4650億ユーロ)を農家への直接助成として支出しました。また、人為的に価格を抑制することで農家に対して暗黙的に課税している国々では、農家の収入が年830億米ドル(70億ユーロ)減少しました。
OECDの調査によると、ここ10年間、農業助成政策の改革にはほとんど進展が見られません。多くの農業政策は、農場の生産と取引の決定を相変わらず歪めており、政府が表明している目標に有効に的を絞っていません。
農業助成の54%が、国内の農産物の価格を人為的に国際的な水準より高く維持する政策によって提供されています。この種の助成は、消費者-特に貧しい人々-に損害を与えると共に、大規模農場と小規模農場との所得格差を広げ、食品産業の競争力を弱めます。
ほとんどのOECD諸国の現在の政策構成では、農業生産性の向上や土地、水、生物多様性の持続可能な利用に向けられている政策は相対的に少なくなっています。また本報告書では、各国内及び国際的にも、農作物ごとに助成に大きな差があることも明らかにしています。それが、一部作物に対しては大幅な価格助成が行われたり、他の作物では人為的に価格が抑えられたりして、国際市場における歪曲につながっている可能性があります。
ケン・アッシュOECD貿易・農業局長は、次のように述べています。「政府は、農業世帯と地域の共同体を、国際市場にマイナス影響を与えることなく支援することができる。助成と農家の生産に関わる決定とのつながりを解消し、その代わりに必要とされる公共サービスに投資することで、政府は、農家が国内外の市場における機会の変化に対応して事業決定を自由に行える環境を構築することができる。それと同時に、農業政策はもっと的を絞って、生産性向上と持続可能な資源利用を促すであろうテクノロジーの利用可能性を向上させる必要がある。」
本報告書は、OECD加盟国、EU加盟国、さらに主要新興諸国について、政府の農業助成の最新推定額を収録した年報です。2019年版に収録されている新興諸国は、ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、カザフスタン、フィリピン、ロシア、南アフリカ、ウクライナ、ベトナムの他、今回初めてインドとアルゼンチンが収録されています。
Agricultural Policy Monitoring and Evaluationは、OECD iLibraryで公開されています。53カ国についての指標には、インタラクティブな Compare Your Country tool をご利用ください。データはこちらからもダウンロードできます。
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