OECDーパリ、2019年8月30日
OECDの新報告書によると、政府は、人口の高齢化が急速に進展する中で、生活水準と公共財政の持続可能性を守るために、高年齢者の就業機会の拡大と改善を図らねばなりません。
同報告書「生涯を通じたより良い働き方に向けて(Working Better with Age)」では、現在の退職パターンが続いた場合、休職または退職により労働力から外れた高年齢者(50歳以上)の数、すなわち100人の働き手が支えなければならない高年齢者の数はOECD地域の平均で2018年の42人から2050年には58人へと約40%増加すると予測しています。イタリア、ギリシャ、ポーランドなど一部の国では、そうした高年齢者の数が2050年には働き手と同数以上になる可能性があります。しかし、引退の平均年齢を遅らせるとともに、若い年齢層における就業率の男女差を縮小させることにより、このOECD地域の平均増加率をわずか9%に低下させられる可能性があります。OECDのステファノ・スカルペッタ雇用・労働・社会政策局長は、東京で行われた本報告書の発表会見で、次のように述べています。「人々がより長く、より健康に生きられるようになったことは、喜ばしいことである。しかし、急速な人口高齢化が生活水準と公共財政に与え得る深刻な影響を相殺するために、活力ある高齢化を促進する協調的な政策対応が必要となる。」
本報告書では、一部のOECD諸国において、高年齢者が65歳以降まで働き続けることを奨励する施策が大きく進展していることが強調されています。それでもなお、ほとんどすべてのOECD諸国では、引退後の年数が長期化しているにもかかわらず、今日の高年齢者が労働市場を離脱する事実上の年齢は30年前を下回っています。この現状を説明する要因として、高年齢で働き続けるインセンティブが低いこと、事業主が高年齢者の採用や雇用継続に消極的であること、職業人生を通じて雇用される能力を維持するための投資が不足していることが挙げられます。
多くの国において、高年齢者の就業を促進し、それに伴う不利益をなくすために、さらなる取り組みが必要です。高年齢の労働者に対する労働力需要を喚起し、一定年齢以降の不安定な雇用形態の利用を抑制するために、必要に応じて雇用関連規制や年功序列型賃金を見直し、改革するべきです。全年齢層の就業率を高めるために、労働時間の柔軟性を高め、労働条件全般を改善することも必要です。例えば、長い労働時間は、高年齢者が働き続ける上でも、女性が育児休暇から復帰し、長く職業キャリアを積み上げていく上でも阻害要因となる可能性があります。若い年齢の時の劣悪な労働環境は、年齢を重ねてからの不健康と、より早期の退職につながる可能性があります。
また高年齢の労働者のスキルへの投資も重要だとOECDは考えています。高年齢者の多くは子や孫の世代に比べてデジタル化への準備度合いが低く、仕事関連の訓練への参加も若い年齢層に比べて格段に少ないものとなっています。「高年齢の労働者が若い労働者とのスキルの差を埋めることを阻む重要な要因の一つは、事業主が多くの場合、高年齢従業員の訓練に投資することについて、メリットを感じていないことにある。労働者が職業キャリアを通じて自分のスキルを高め、新しいことを学ぶ良い機会を提供することは、良質な仕事をより長く続けられるようにするための重要要件の一つである。」とスカルペッタ氏は述べています。
高齢化および雇用に関するOECD理事会勧告(2015年)に沿って、OECDは各国政府に対して、大きく分けて次の3分野でさらなる対策を実行するよう提言します。
- 高年齢者の就業に報いるために、i)平均寿命の長期化に合わせて、老齢年金制度が退職時期の延期を促しそれに報いるものであるようにし、就業から退職への移行をより柔軟に行えるようにすること、ii)公的資金で助成される早期退職制度の利用を制限し、事業主による強制的な定年を抑制すること、iii)福祉給付が、就労できない者や求職活動中の者への所得補助に利用されるものとし、事実上の早期退職制度として利用されないようにすること。
- 事業主が高年齢労働者を採用し、雇用継続するように促すために、i)採用、昇進、雇用継続における年齢差別に対処すること、ii)社会的パートナーと協力して賃金設定方法を見直すこと、及び年齢を基準とする特別な雇用保護ルールをなくすことにより、高年齢労働者の人件費と生産性のより適正なバランスを探るiii)多様な年齢層が働く職場を管理するために事業主が取るべき優れた慣行を奨励すること。
- 労働者が、職業人生を通じて、雇用される能力を維持できるようにするために、i)生涯学習とスキル評価へのアクセスを改善すること、ii)全年齢層の労働条件と仕事の質を改善すること、iii)失業した、または転職を希望する高年齢労働者を対象に、効果的な就業支援を提供すること。
OECD高齢社会の雇用政策についての詳細は、下記のウェブサイトでご覧になれます。
http://www.oecd.org/employment/ageingandemploymentpolicies.htm
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
Stefano Scarpetta (stefano.scarpetta@oecd.org, tel: +33 6 17262262), Mark Keese (mark.keese@oecd.org; tel: +33 6 18880173) or Shruti Singh (shruti.singh@oecd.org; tel: +33 1 45241948) of the OECD’s Directorate for Employment, Labour and Social Affairs or the OECD Tokyo Centre Yumiko Yokokawa (yumiko.YOKOKAWA@oecd.org).
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