2018年9月3日
OECDの新報告書、 「OECD企業・金融業アウトルック2018年版(2018 Business and Finance Outlook)」 は、いくつもの大きなリスクが世界の経済成長を妨げる可能性があると強調しています。負債が増加する中で金融政策が徐々に正常化されることが、金融制度の安全性と健全性を確保するというバーゼルIIIの規制改革がその目標を達成したかどうかを試す主な試験となると、本報告書は指摘しています。
資本ルールは強化されていますが、グローバルなシステム上重要な銀行というビジネスモデルは、2008年の金融危機前からほとんど変わっていません。相互依存の1つの基準である店頭デリバティブ取引の想定元本は、2017年後半には532兆米ドルで、2007年後半の金融危機前の最高額586兆米ドルをわずかに下回っていました。
金融見通しは、中国の銀行業やシャドーバンキング(影の金融)、資産管理業界における多額の債務やレバレッジに関連する同国のリスク管理能力にも左右されます。中国の不良債権問題の大きさは、簿外投資目的会社(off-balance sheet vehicles)が保有している資産に関する情報がないため不透明です。このため、主要先進国や新興国で金融市場や金融機関の構造の一層の改革が検討されなければ、中国を超える成長が阻害される可能性があります。
中国の企業の債務増加が原因で生じる中国の金融が不安定化するリスクがあることから、中国の一帯一路構想が経済的に実現可能なプロジェクトを確実に生み出すようにすることが、さらに重要になってきます。本アウトルックは、一帯一路構想が世界のインフラ格差を埋める上で重要な貢献をすることを認めていますが、どのような国際的なインフラ構築の取り組みも相互に強化し合い、グローバル・スタンダードを尊重したものであるべきだと強調しています。本報告書では、投資プロジェクトはその資金源がどこであるかを問わず、実行可能で費用対効果が高く、適切に選ばれたものでなければならないと述べています。
本アウトルックでは、一帯一路構想が主に負債によって資金を得ており、ビジネス環境に問題がある多くの国々を抱えていることから、他の投資諸国・機関と協力する必要があると論じ、またその成功にはOECD諸国からの多大な貢献が必要であるとも述べています。そのためには、資源配分の決定で市場が果たす役割を強化することが求められます。そして、それを可能とするために、財産権や競争、公平な競争条件、健全なガバナンスを強化する必要があります。
国際標準との連携強化により国境を越えるインフラ投資が恩恵を受けられる5大分野は、下記の通りです。
- グローバル経済において国営企業(SOEs)の役割が大きくなってきたことで、助成金や様々な不透明なプロセスを抑制し、コーポレートガバナンスという広く受け入れられている体制に基づいて、被援助国が投資の恩恵を受けられる公平な競争条件を保証する方策が求められる。
- 調達に関する開かれた透明性ある取り決めが、特に大規模なインフラ投資に関して必要である。
- 大規模なインフラ・プロジェクトだけでなくどのような場合でも、贈賄・汚職により重い負担が生じる事態を避けなければならない。地域社会に及ぼす混乱を最低限にとどめる、責任ある事業活動を保証することで、社会的コストと環境コストを考慮する必要がある。
- 各国政府は、提案された設備やインフラのプロジェクトに着手する前に、環境評価を実施する必要がある。
- コストを削減しテクノロジー関連の選択肢を増やすためには、国際投資に関する開放的かつ透明性のある体制が不可欠である。
これら5分野全てについて、OECDは新たなインフラプロジェクトが行われる国々と、資金、資材、専門知識を提供する国々の双方に基本的な指針を提供しています。
本報告書は、下記のウェブサイトにて公開しています。
http://www.oecd.org/investment/oecd-business-and-finance-outlook-26172577.htm
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
OECD Media Office (tel. + 33 1 45 24 97 00).
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