アジア諸国の税収の対GDP比は、引き続き国によって大幅に異なっています。近年、税収が落ち込んでいる国もありますが、2000年以降、大半の国で税収の対GDP比は上昇しています。それにもかかわらず、アジアの開発途上国は国内資源の活用を下支えするために税収を拡大する更なる取り組みを必要としています。
OECDが発表した新データによると、アジア諸国の2015年の税収の対GDP比は、インドネシアの11.8%から日本の32%超まで幅がありますが、日本と韓国を除く全ての国が18%を下回っていました。
2017年版の『アジア諸国の歳入統計(Revenue Statistics in Asian Counties)』は、第4版で、初めて収録されたカザフスタンを含め、7カ国を対象としています。本書によれば、この7カ国は2015年の税収の対GDP比がOECD平均の34.3%を下回っており、とりわけインドネシア、カザフスタン、マレーシア、フィリピンでは、持続可能な成長を達成するために依然として税収拡大の余地が残されていることを浮き彫りにしています。
インドネシア、カザフスタン、マレーシアの2015年の税収の対GDP比は3年連続で下落しました。シンガポールの税収の対GDP比も下落しましたが、2013年よりは高い水準を維持しています。こうした下落は、法人税収や特定の財・サービス(主に物品税、関税、輸出税)からの税収の落ち込みによるものです。税収の対GDP比が最も大幅に下落したのはカザフスタンで、他の国が0.7ポイント未満の低下だったのに対し、5.6ポイントの下落となりました。これは主に石油税収の落ち込みによるものです。対照的に、OECDと南米カリブ諸国(LAC)では、同じ期間にそれぞれ平均0.1ポイント、0.6ポイント上昇しました。
世界中で商品価格が大幅に下落したこと、中国の景気減速、先進諸国の経済の伸び悩みなどによって近年は税収が落ち込んだにもかかわらず、2000年以降、大半の国で税収の対GDP比が上昇しています。これは、経済情勢の好転ばかりでなく、税制改革と税制及び税務の近代化にもよるものです。2000~2015年に対GDP比の上昇を牽引した税目は国によって異なります。例えば、韓国と日本は社会保険料(SSC)、フィリピンとマレーシアは法人税収、インドネシアは所得・利益税からの税収と財・サービス税からの税収です。対象7カ国のうち、2015年の税収の対GDP比が2000年の水準より低かったのはカザフスタンとシンガポールの2カ国のみで、これは、両国とも(法人税率の変更などによる)法人税収が落ち込んだことと、カザフスタンの給与税の減少によるものです。
これらの国々の税構造は、国によっても、また南米カリブ諸国やOECDの平均的な税構造と比べても、異なっています。日本と韓国を除き、本書が対象としている国々は、南米カリブ諸国やOECDの平均に比べ、法人税に対する依存度が高く、社会保険料や-インドネシアを除いて-付加価値税(VAT)に対する依存度が低くなっています。
本年版には各国のVAT税収比(VRR)が初めて収録されました。VRRが100%ということは、VATの本来の課税ベースからVATが漏れなく徴収されており、減免措置、軽減税率、不正、税金逃れ、節税対策などによるVAT税収の喪失がないことを意味します。2014年のVRRが最も低かったのはフィリピンとカザフスタンで、両国とも50%未満、最も高かったのはシンガポールで、84%でした。2000年以降、VRRが大幅に上昇しているのはインドネシアとカザフスタンで、それぞれ23ポイント、14ポイントの上昇です。
2017年版では、電子申告向けと納税向け両方の情報通信技術(ICT)の発展に関する特集が組まれています。ICTの発展は、税サービスの質を高め、納税者の法令順守負担や政府の行政コストを軽減し、徴税を強化することができます。インドネシアが最近、MPN-G2(第二世代国家歳入モジュール)の電子納税システムを導入したり、フィリピンが電子申告・納税システムの利用規制を厳格化したり、カザフスタンの電子税務申告率が95%に達したりするなど、行政や公共サービス提供を近代化するためにICTを活用することに対するアジア諸国の注目は高まりつつあります。
本報告書は、OECDと東南アジア諸国との関係強化を目的として2014年に開始された、OECDの東南アジア地域プログラムの税に関する地域政策ネットワークに寄与するものです。
本報告書は、OECD Revenue Statisticsシリーズの出版物です。Revenue Statisticsには、アフリカ、南米・カリブ諸国、OECD諸国の歳入統計を比較できるデータベースが含まれており、透明性の高い政策対話を促進し、政策当局が税制改革を評価する一助となります。
本書は、OECD税務センターと、OECD開発センターが、アジア開発銀行と共同で出版するものです。
本報告書の詳細は、下記のウェブサイトをご覧ください。http://www.oecd.org/tax/revenue-statistics-in-asian-countries-2017-9789264278943-en.htm
報道関係者のお問い合わせは下記までお願いいたします。
Michelle Harding (+33 1 45 24 9368) : OECD Centre for Tax Policy and Administration
Prasiwi Ibrahim (+33 1 45 24 8733) : OECD Development Centre
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