2015年7月2日
移民の子供は、OECD加盟国において社会統合する過程で引き続き大きな困難に直面しています。この傾向は特にEU諸国で顕著に見られており、彼らの乏しい教育成績が後々の就職活動で困難な結果につながっていると、最新のOECD/EU共同報告書は指摘しています。
移民の社会統合指標2015年版によると、EU諸国において、移民の両親を持つ若者は、ネイティブの両親を持つ若者と比べ約50%も失業率が高いことが示されました。
仮に、移民の子供のほうが外国生まれの両親に比べて労働市場における貢献が良かったとしても、移民自身よりも、移民の親を持つ自国生まれ(ネイティブ)の子供のほうが差別を受けていることもわかりました。これはEU諸国の現状であり、5人に1人が差別を受けていると感じています。これはOECDの中の非欧州の諸国では見られない傾向です。
概して、教育成績は多くの移民及び移民の親を持つ子供で向上が見られていますが、それでも学歴の低い親を持つ子供にとっては格差が依然として大きく残っています。EU諸国において、OECDのPISA読解力テストで高いレベルの成績をおさめた社会経済的に恵まれない移民の子供は、ネイティブの生徒の半分しかいませんでした。
アンヘル・グリアOECD事務総長は、「両親がどこで生まれたかというのは、引き続き人生の選択に大きなインパクトをもたらしている。各国政府は、移民やその子供たちが社会に統合できるよう支援するという点でまだまだ十分な成果をあげることができていない。これは我々の経済や社会、そして移民自身の利益のために移民を最大限活用できるよう彼らの社会統合政策を強化すべきというウェイクアップ・コールである。」と述べました。
OECD/EU報告書は、今回初めて、OECD加盟国及び全EU諸国における移民及び彼らの子供の社会統合具合を詳細にわたり国際的に比較したものです。本指標は、雇用、教育、所得、住居、健康、市民貢献、社会統合性などといった社会統合に関する主要な分野をカバーしています。特に移民の背景をもつ若者に焦点をあてています。
EU及びOECD諸国において、2000年から移民人口は30%以上増加しました。2012年、EU及びOECD諸国に住んでいる10人に1人は外国生まれであり、4人に1人の若者(15-34歳)は、外国生まれか移民の親を持つ子供でした。
本レポートによると、低学歴の移民はネイティブの人に比べて高い雇用率になっていますが、低賃金かつ乏しい労働状況の仕事に留まっていることが多いです。移民労働者は、ネイティブの人に比べて、その国の相対的貧困以下の所得家計に住んでいる割合が2倍です。移民は、低所得であることも原因となり、OECD諸国において、ネイティブの人よりも人口密度の高い家に住む確率が2倍であることもわかりました(19%と8%)。
移民は、ますます高技能になってきています。本レポートによると、これはつまり、将来的な移民の社会統合が発展を約束しているということです。しかし、OECD諸国では3人に1人の労働生産年齢の移民、そしてEUでは4人に1人の労働生産年齢の移民が、高等教育を卒業しており、その中のほとんどは海外で高等教育の資格をとっています。全ての国において、低学歴の移民と比べると、高等教育を受けた移民は、ネイティブの人と比べて低い雇用率となっています。雇用されたとしても、ネイティブの人と比べてオーバークオリファイ(過剰な資格)であることが多いです。これは、特に海外の資格保有者に多くみられ、彼らは高学歴移民のほとんどを占めています。
EU諸国において、高学歴の移民労働人口で海外の高等教育資格保有者の42%が、彼らの教育レベルよりも低い職に就いており、これはその国での資格を保有する者の2倍の数字になっています。これにもかかわらず、高学歴の移民は、依然として低学歴の移民よりも労働市場においてより良い成果を出しています。
>> 日本語概要
本レポートの詳細お問い合わせは、OECD Media Division (tel. + 33 1 45 24 97 00)まで。
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