OECD-パリ、2019年7月8日
農作物需要は、今後10年間に世界全体で15%増加すると予測されていますが、農業生産性の伸びのペースは需要のそれり遅く、主要農作物の価格を現状維持またはそれより低くするためにインフレ調整価格が導入されることになると、OECDと国連食糧機関(FAO)の年次報告書、「OECD-FAO農業アウトルック(OECD-FAO Agriculture Outlook)」は明らかにしています。
本日ローマにおいて発表された本年版のOECD-FAO農業アウトルックには、各国、地域、世界レベルで農水産物市場の10年の見通しについて、一致した見解が収録されています。
ホセ・グラツィアーノ・ダ・シルバFAO長官とアンヘル・グリアOECD事務総長は、本報告書の序文にて次のように述べています。「世界の農業は、小規模の自由自足的農場から大規模な多国籍企業が経営する農場まで存在し、非常に多様な産業へと変貌した。現在の農業部門は、食料供給に加えて、国の環境の重要な保護者としての役割も担っており、再生可能エネルギーの生産者でもある。」
本アウトルックによると、技術革新に後押しされて収量が改善し生産集約性が高まることで、世界的に農地の利用が総じて変化しないにもかかわらず、生産高は増加すると予測しています。その一方で、農業部門からの直接的な温室効果ガス排出量は、今後10年の間に毎年約0.5%増加する見込みです。この値は過去10年の年率0.7%という増加率と、予測される生産の伸び率を下回っており、炭素集約度が低下していることを表しています。
それと同時に、農業部門が直面するリスクのトップに、新たな不確定要素が出現しています。その中には貿易摩擦による混乱、穀物や家畜の病気の蔓延、抗菌物質の耐性の高まり、新たな植物育種技術への規制対応、極端な気候現象の頻発などがあります。また、健康と持続可能性という観点から食の選好が変化していることや、世界的に広がる肥満への政策対応も、不確定要素の中に含まれます。
人口増加、都市化、生活様式
世界全体で、食用穀物の需要が本報告書の予測期間中に約1億5000万トン増加-13%の伸び-すると見られており、中でもコメと小麦がその増加の大半を占めることになります。主要作物の食品用途が増加するという予測の背後にある最も重大な要因は、人口増加で、そのペースが最も速いと予測されるのは、サハラ以南のアフリカと南アジアです。
マキシモ・トレロFAO経済社会開発担当次長は、次のように警告しています。「残念ながら、最も需要が高い地域ほど所得の伸び率が鈍く、その結果、栄養状態もごくわずかしか改善しない。本書の調査結果によると、総じて栄養不良の人は減少するが、現在の改善率では、2030年までに飢餓をなくすという目標は、到底達成できない。」
ケン・アッシュOECD貿易農業局長は、次のように述べています。「本アウトルックから、貿易が世界の食糧安全保障の鍵を握っていることは明らかである。人口が急増している地域で必ずしも食料生産を持続的に増加させられるわけではなく、あらゆる国々の政府が開放された透明で予測可能な農業食料市場を支援することが不可欠である。」
本報告書によると、加工食品への需要が特に多くの急速に都市化する低所得国、中所得国でさらに高まることを反映して、砂糖と植物油の消費水準が高まると予測されています。その一方で、健康と暮らし良さへの懸念から、多くの高所得国では、赤身肉の消費量が減少し、植物油からバターに緩やかに移行すると見られています。
さらに、畜産部門が伝統的な生産システムから商業ベースのそれへと変化している国々では、飼料の需要が家畜生産のペースを上回ると予測されており、その一方で、バイオ燃料生産のために農作物を飼料として利用することが主に開発途上国で増加すると予測されています。
農水産物の貿易は、今後10年にわたり毎年約1.3%増加すると見られていますが、この増加率は、世界的な輸入需要の伸びが鈍化する見込みから、過去10年の平均3.3%よりは鈍くなります。輸出面では、南米と欧州による海外市場への輸出が増加すると予測されています。
特集:南米諸国
2019年版では、南米・カリブ諸国を特集しています。この地域は、世界の農作物生産の14%、農水産物の輸出の23%を占めており、2028年には後者の比率は25%にまで高まると予測されています。
このように顕著な成長にもかかわらず、この地域では多くの世帯が必要な食料を購入できず、食料安全保障という点で絶えず課題を抱えています。また、この地域は天然資源の問題にも直面しています。将来の農業の成長をより持続可能で包摂的なものにできるか否かは、栄養、社会保障と環境保護、生活支援といった領域の発展に左右されます。
この地域には、高価値の果物や野菜を生産する「強い成長の機会」がいくつも存在しており、それが小規模農家によりよい機会を、人々にはより健康な食習慣をもたらします。的を絞った政策により、農家も消費者もその機会の恩恵を受け、地域の天然資源の保護もできると本報告書は述べています。
OECD-FAO Agricultural Outlook 2019-2028についての詳細及びOECDの専門家へのインタビューをご希望の方は、下記まで御連絡ください。
Lawrence Speer (+33 1 4524 7970) in the OECD Media Office (+33 1 4524 9700).
FAOの専門家へのインタビューをご希望の方は、下記まで御連絡ください。
FAO Newsroom (+39 06 570 53168).
本報告書の結論を含む情報およびデータは、下記のウェブサイトからご覧いただけます。
www.agri-outlook.org
本アウトルックに関する記事から、上記のウェブサイトにリンクを張っていただけましたら幸いです。
日本語サマリーはこちらからご覧いただけます。
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