OECD ーパリ、2019年3月12日
デジタル転換が進んでいますが、その範囲とスピードは国によっても、また産業部門、人、地域によって大きな差があります。政府が企業や人々、政策をデジタル社会に対処できるようにする取り組みを続けて初めて、デジタル化の恩恵が経済社会にもたらされます。
3月11〜12日にパリで開催されたOECDのGoing Digital Summit で発表されたデータによると、かつてないほど多くの人々がインターネットに接続できるようになりましたが、依然として格差が残っており、また新たな格差も現れています。OECD諸国の僻地では、モノのインターネットを支えるのに必要な高速固定ブロードバンドにアクセスできない世帯が10世帯中4世帯より多いのに対して、都市部では、10世帯中9世帯が高速ネットワークに接続しています。また、高学歴の人々と低学歴の人々の間でもインターネットの利用方法に差があります。インターネットバンキングの場合、その差は40%ポイント以上あります。
男女間のデジタル格差では、情報通信技術(ICT)関連の専門職において女性の方が遅れており、プログラミングができる若年者は、男性が女性の2倍になっています。インターネット利用における男女差が依然として大きい国もあります。
アンヘル・グリアOECD事務総長は次のように述べています。「デジタル転換は、我々の生活のあらゆる側面に影響している。それは社会経済的な交流を再編し、雇用、スキル、プライバシー、セキュリティについての懸念が高まっている。また、人々の生活を大幅に改善する可能性があるイノベーションと、プライバシー、セキュリティ、競争、または公平性といった多くの懸念とのバランスを取らなければならず、我々の政策枠組みが試されている。我々にはデジタル転換があらゆる人々の人生に力を与え向上させるよう、それを正しい方向に向ける責任がある。」
経済社会のデジタル転換には、訓練という重大な課題があります。デジタル社会で成功するために必要な問題解決能力を十分に身につけている成人はわずか31%、また高い技能を身につけた人の方がデジタル化の機会からより多くの恩恵を得られる傾向があります。訓練は、それを最も必要としている人々、特に低技能の労働者を対象としなければなりませんが、企業が提供する訓練を受けている低技能労働者の割合はわずか30%であるのに対して、高技能労働者では73%に上ります。
データとデータフローは、価値創出の源として重要性が増しています。1日当たり12億5000万枚のDVDに相当するデータが生産されています。デジタル時代により多くの価値を創造するには、国及び民間のセキュリティへの懸念を考慮に入れつつ、データへのアクセスとその共有を拡大し、相互運用可能なプライバシー枠組みにより国境を越えるデータフローを促進し、政府のデータを開放する必要があります。
オンラインのプライバシーと信頼に関して更に多くの懸念と、ソーシャルネットワークが人々の精神の健全性に及ぼす影響と民主主義にも対処しなければなりません。ネットいじめの問題は拡大しており、15歳の若者の10人にほぼ1人がその被害に遭っています。人工知能(AI)の急速な発展は、生産と科学を大変革をもたらしており、スマートホームアプリ、医療サービスの改善、不正の検知などによって消費者に直接的な利益をもたらしていますが、AIは信頼、セキュリティ、責任などの問題も提起しています。OECDはAIのための一連の原則を設計することで、こうした問題に対処する方法を模索しています。
その他の主な結論と提言は以下の通りです。
- モノのインターネットは急速に成長しており、2022年までには世界全体で1人当たり3台のネットワーク端末を所有するようになります。しかし、ネットワークの容量は不足しています。OECD地域では、光ファイバーの利用契約者は100人当たりわずか7人です。競争を促進し、特に光ファイバーへのインフラ投資の障壁を削減することで、アクセスを増やすことができます。
- ほとんどの人々、企業、政府はネットワークを利用していますが、高度な使い方をしているユーザーは多くありません。小規模企業でビッグデータ解析を行っているのは11%に過ぎず、対照的に大企業では33%です。政府はICTとスキルに投資をすることで、デジタルツールの高度な利用を奨励することができます。
- イノベーションは、デジタル化、データ主導になってきていますが、全ての国々が同じようにイノベーションを行っているわけではありません。2013〜16年には、OECD諸国の特許の約33%がICT関連でしたが、中国ではその割合は約60%でした。政府は、起業を促進し、基礎研究を支援し、研究開発や特許、ソフトウェアに投資をすることで、イノベーションを強化することができます。
- デジタル転換は、仕事の世界をも変えています。OECDの推計によると、将来的にあらゆる職業のほぼ半数が自動化の影響を受けますが、過去10年に創出された職業10種のうち4種は、高度デジタル集約部門のものです。政府は、衰退する職業から拡大する分野へと公平な移行を確保し、雇用の柔軟性と移動性と安定性とのバランスを取る必要があります。
- 信頼は、デジタル転換を根本から支えていますが、インターネット利用者のほぼ3人に1人がソーシャルネットワークと専門家向けネットワークに不信感を持っており、EU市民の15%はセキュリティへの懸念からネットショップやネットバンキングを利用していません。デジタルセキュリティのリスク管理とオンラインの消費者保護の改善を戦略的優先課題です。
- デジタル技術とデータは、各国の競争、取引、投資の仕方を変えています。例えば、デジタル集約が最も進んで部門の企業は、それ以外の企業よりも利幅が55%高く、2007〜15年にデジタル集約型企業の国際的な買収の成長率は、それ以外の部門のそれを20%ポイント上回りました。貿易と投資の障壁を削減し、変化するダイナミクスに対処することで市場開放が更に進みます。
Going Digital Summitで公表される報告書とインタラクティブデータツールは、下記のサイトでご利用いただけます。:
OECD Going Digital Summitは、OECDのGoing Digitalプロジェクトの第一段階の最後を飾るもので、過去2年間の主な結論と政策メッセージが公表されます。このサミットにはデジタル経済関連政策の策定に携わる政府高官と主要関係者が参集し、OECDのGoing Digitalの政策枠組みの下記の7領域について意見交換を行い、実例と経験を共有しています。 アクセス拡大、有効利用の増加、イノベーションの開放、雇用の確保、社会の繁栄の促進、信頼の強化、市場開放の促進。2019年のOECD閣僚理事会は5月22〜23日開催されます。そのテーマは、「持続可能な発展のためのデジタル転換促進:機会と課題」です。
報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。
Catherine Bremer in the OECD Media Office (+33 1 4524 80 97).
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