OECDとFAO、食料需要の伸びの鈍化が世界の食料品価格を低く抑えると予測

 

OECD - パリ、2017年7月10日

OECDとFAOが本日発表した最新の農業の5年見通しによると、世界の食料品価格は、先のピーク時と比較して、今後10年は低い状態が続くと予測されていますが、それはいくつかの新興諸国における食品の需要の伸びが鈍化し、バイオ燃料政策が市場に及ぼす影響が薄れていることによるものです。

『OECD-FAO農業アウトルック2017-2026 (OECD-FAO Agricultural Outlook 2017-2026) 』によると、過去10年間に穀物在庫が追加的に2億3,000万トン補充されたことと、その他の作物の在庫が豊富にあることも、世界の農産物価格の上昇を抑制しており、今ではほぼ2007-08年の食料価格危機の前の水準にまで戻っています。

1人当たりの主食の需要は、最貧国を除くと横ばいになると、本報告書は予測しています。本書の予測期間中のカロリー及びタンパク質の消費量の増加分は、主に植物油、砂糖、乳製品で補われるとみられています。食肉需要の伸びは鈍く、以前は中国が要因となった需要増を維持するほどの新たな需要増の要因はありません。

2026年までに、平均カロリー摂取可能量は最貧国の場合は1人当たり1日2,450キロカロリーに達し、他の開発途上国では3,000キロカロリーを超える見込みです。それでも、食料不安とあらゆる形態の栄養不良は世界的な問題で、国際的に協調されたアプローチが必要だと本書は述べています。.

農作物生産の将来の伸びは、主に単位面積当たりの収量の伸びによってもたらされます。トウモロコシの生産量の増加分の90%は単収の伸びによるもので、残る10%のみが農地の拡張によると予測されています。

それに対して食肉及び乳製品の生産高の伸びは、畜産頭数の増加と一頭当たりの生産量の増加の双方によってもたらされると予測されています。牛乳の生産量は、過去10年間よりも速いペースで伸びる見込みですが、特に増加が著しいのはインドとパキスタンです。養殖は漁業部門の伸びを決定づけ、養殖魚の生産高は本アウトルックに収録されている水産物の中でも最も急速に増加するタンパク質源になると見られています。

農産物及び水産物の貿易高の伸びは、過去10年間の伸び率の半分程度に鈍化し、ほとんどの産物の数量ベースで平均で年間2%未満になる見込みです。それでも、農業貿易は他の部門の貿易と比べて景気の悪化に対して回復力が依然として高いことが期待されています。ほぼ全ての農産物について、輸出は依然として少数の供給国に集中していますが、これは、世界市場が供給ショックに対してより脆弱だからだと考えられます。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリで開かれた発表会見で、次のように述べました。「大半の農産物、水産物の実質価格は向こう10年にわたって小幅な下落傾向をたどる見込みである。過去にもあったことだが、想定外の出来事によって市場がこれらの中心的なトレンドから外れることはあり得る。したがって、各国政府は引き続き協力して、世界食料市場の安定化に努めるべきである。また、我々は、世界の食料、農業が抱える根本的な問題に対処する方法を模索しており、将来に備えることも同じように重要である。すなわち安全で健康的で栄養価の高い食料を増え続ける世界の人口が手に入れられるようにすると同時に、天然資源をより持続可能な方法で利用して気候変動の影響を抑制することに効果を上げるということである。」(スピーチ全文) 

ホセ・グラツィアーノ・ダ・シルバFAO局長は、次のように述べました。「基本食料のカロリー供給量が高まっているというのは良いことだ。しかしこれは、2030年までに飢餓とあらゆる形の栄養不良を撲滅するという世界的な目標の達成を保証するものではない。土地資源と水資源が消耗されるペースは鈍くなる見込みではあるが、その減少率はまだ警戒すべきレベルで、持続可能な資源管理に向けた取り組みを強化しなければならない。OECDとFAOのアウトルックは、我々に、政治的意思を行動に移し、より持続可能な方法で飢餓の撲滅を加速するために必要とされる資源を動員するよう働きかけなければならないということを再認識させてくれている。」

 

 フォーカス:東南アジア

農業アウトルック2017年版の特集は、東南アジアを取り上げています。同地域は着実に経済成長を遂げ、農水産業部門が急速に発展しています。本報告書によると、この広域的成長によりこの地域では近年栄養不良が大幅に削減されました。しかし、農業、漁業の成長、特に輸出志向型の漁業部門とパーム油部門は、天然資源により一層圧力をかけることに繋がっています。

東南アジアで持続可能な発展に注目が集まれば、パーム油の生産量の伸びは鈍化すると本報告書は述べています。農業部門全体では、単位面積当たりの収量が引き続き増加しますが、今後10年間の栽培面積の増加率はわずか10%程度となり、これまでの10年間の70%より大幅に下がる見込みです。

農業部門全体で持続可能な生産性の伸びを実現するためには、資源管理を改善し研究開発(R&D)を増やす必要があります。農業の多角化を促進するため、コメ生産への政府の様々な支援を見直すこともできます。この地域の気候変動に対する感度の高さを考えると、変動への適応を円滑に進めるための投資も必要です。

 

本報告書のその他の結論:

  • 多くの低所得層は、世界全体の1人当たりの需要の伸びを今後10年にわたり1%で維持する(過去10年は6%の伸び)。
  • 砂糖の1人当たりの需要の伸びは、今後10年はより速まり8.1%になると予測されている(過去10年は5.6%)。
  • インドは、2026年までに人口が最も多い国になると予測されている。牛乳の1人当たりの消費量は現在も多くまた増え続けており、今後10年で世界の牛乳生産量の増加分の42%をインドが消費すると見られる。
  • バイオ燃料生産量は、今後10年で17%伸びると予測されている(過去10年は90%)。
  • 単位面積当たり収量は、小麦の生産量においては増加分の85%、トウモロコシの生産量においては90%を占め、収穫面積の増加による収量増は2%に留まると見られている。それに対して、大豆の収穫面積は主に南米において14%拡張すると予測されており、世界の生産量の増加の約60%を占めることになる。
  • 魚は、2026年までに中国と東南アジアで消費される動物性タンパク質の半分を占めると予測されている。
  • 養殖による魚肉生産総量は、本報告書の予測期間の半ばには、漁獲量を上回ると見られている。

 

 

本報告書について、詳しくは以下のサイトをご覧下さい。 www.agri-outlook.org.

サマリー日本語版

 

報道関係の方々のご質問は、下記までお願いします。
 OECD Media Office (+33 1 4524 9700)

 FAO  Christopher Emsden (+39 6 570 53291)

 

 

 

 

 

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