OECD - メキシコ、2017年6月21日
OECDの新報告書、『OECD保育白書2017年版(Starting Strong 2017)』によると、各国は、社会的流動性を高め、あらゆる子供が自分の能力を最大限活かす機会を得られるように、安価で質の高い早期幼児教育・保育(early education and care, ECEC)を提供する取り組みを強化するべきです。
本報告書は、ほとんどの政府が近年、入園、入学者を拡大するためにより多くの託児所と学校を開設するための投資を増やしていることを明らかにしています。今後各国は、教諭の労働条件の改善、あらゆる子供に公平な利用の機会を確保すること、新たな指導方法の導入などに焦点を当てる必要があります。
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どの子供も質の高いECECから恩恵を受けることができます。PISA2015調査結果によると、ほぼ全てのOECD諸国で、ECECを受けたことがある15歳の生徒は、ECECを受けなかった生徒よりも良い成績を上げています。恵まれない環境にある子供が最も多くの恩恵を受けるため、こうした子供を対象とすることで成果も最大化することができると、本報告書は述べています。
ガブリエラ・ラモスOECD首席補佐官兼G20シェルパは、メキシコで行われた本報告書の発表会見で次のように述べました。「全ての子供に質の高い早期幼児教育・保育を受ける機会を与えることが、将来的な技能開発の基礎となり、社会的流動性を高め、包摂的成長を支えることになる。」
ECEC向け支出はOECD平均で対GDP比0.8%で、そのうちの80%以上が公的資金です。
OECD諸国平均で、3歳未満の子供の約3人に1人が公式な保育を受けています。その割合は国ごとに大きな差があり、チェコ、メキシコ、スロバキアでは10%未満、フィンランドとスウェーデンを除く北欧諸国、ベルギー、フランス、ルクセンブルク、オランダでは50%以上です。
就学前教育への3歳児の参加率が、2005年から2014年の間に15ポイント以上高まったのは、オーストリア、チリ、イスラエル、ラトビア、メキシコ、ポーランド、ポルトガル、ロシア、スロベニアなどの国々です。OECD加盟諸国を平均すると、3歳児の70%が就学前教育を受けていますが、オーストラリア、ギリシャ、スイス、トルコの20%未満から、ベルギー、フランス、アイスランド、ノルウェー、スペインの95%以上まで、国によって差があります。
ほとんどのOECD諸国で、誰でも、またはほぼ誰でもECECを少なくとも1年は受けるという状態が実現しており、持続可能な開発目標の教育目標に向けて大きく進歩しています。データがある国々の3分の2で、4歳児の90%以上がすでに就学前教育または初等教育を受けています。
本書は、以下を含むいくつかの結論と提言を収録しています。
- ECECの専門職の給与と労働条件を改善することで、若者を引きつけ、長く従事させることができます。しかし、就学前教育の教諭の25%以上の年齢が30歳未満の国は、オーストリア、韓国、日本、ニュージーランド、トルコ、英国のみです。
- ほとんどの国では、ECECの教諭になるには少なくとも学士号が必要ですが、ECECの教諭の給与は中等教育以上の学歴の同年齢の人々より少なく、高等教育を受けたフルタイム労働者の平均給与の74%にすぎません。OECD諸国全体で、高等教育を受ける人の10人に4人が女性であるのに対して、就学前教育の教諭では10人中9人が女性です。
- 質の高い保育をより安価にすることで、幼い子供を抱えて職場復帰する母親の数が増え、ワークライフバランスが改善します。デンマーク、ルクセンブルク、オランダ、ポルトガル、スロベニア、スイスでは、母親の70%以上が仕事を持っています。またこれらは、公的保育への子供の参加率が最も高い国々です。
- 親の関与も重要です。子供の家庭学習を手伝うことと、教師と親との連絡が密であることは、子供のその後の学業的成功と社会情緒的発展に強く関わっています。
- 質の高い早期幼児教育・保育は、恵まれない環境にある子供に、特に生涯学習を成功させる基礎を与え、その社会情緒的技能を育むことで、最も多くの便益をもたらします。
報道関係者のお問い合わせは、OECDパリ本部メディア課(news.contact@oecd.org tel. + 33 1 4524 9700)までお寄せください。
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