高等教育は、学生が将来に備えられるようにする取り組みを強化すべき

 

OECD ― ロンドン、2019年9月10日

高等教育への需要は引き続き高まっていますが、その更なる拡大が持続可能になるのは、高等教育修了者の労働市場への供給と社会のニーズに合致し、学生に将来必要とされるスキルを与えられる場合のみです。

「図表でみる教育2019年版(Education at a Glance 2019)は、OECDの"I am the Future of Work"キャンペーンの一環として出版されます。本報告書によると、2018年にはOECD諸国平均で25~34歳の人口の44%が高等教育修了の学歴を有していました。この割合は、2008年には35%でした。高等教育修了者の雇用率は、後期中等教育修了者のそれより9ポイント高く、収入は57%多くなっています。

しかし、高い需要がある一部産業部門は、彼らが必要とする技能を見つけるのに苦慮する可能性があります。工学、製造工学、建築学と情報通信技術関連の分野の修了者の雇用率も収入も他のどの学部出身者のそれより高いにもかかわらず、工学、製造工学、建築学の学位プログラムに進学する人は新入学者の15%に満たず、情報通信技術では5%を下回っています。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、パリで行われた本報告書の発表会見で次のように述べました。「若者が、予測不能で変化し続ける世界で生きていくために必要な知識と技能を身に着けることが、かつてないほど重要になっている。我々は、機会を拡大し、将来のスキルニーズへの橋渡しを強化して、あらゆる学生が社会で自分の場所を見つけ、その能力を最大限発揮できるようにしなければならない。」

多くの教育機関が、雇用市場の需要の変化に対応しようと、高等教育に進学する柔軟な道筋を奨励したり、学力と職業能力のバランスを取ったり、雇用主、業界、職業訓練機関との連携を密にしたりして進化しつつあります。しかし、教育機関はそのカリキュラムの妥当性と質を維持したまま、入学者数の増加と経費抑制のニーズとのバランスを取らなければなりません。

2005年から2016年の高等教育機関への支出の増加率は、学生の増加率の2倍以上し、OECD諸国平均で学生一人当たり約15,600米ドルに上りました。いくつかの国々では授業料制度の導入または値上げがあったため、民間資金の割合が高まりました。

 「図表でみる教育2019年版」では、若者がどのように教育から職業へと移行しているかについても、OECD諸国とパートナー諸国が2030年までに教育に関する持続可能な開発目標を達成する上での現状分析の一環として、評価を行っています。それによると、一部の国々では、過去10年間に若者の中退者数が大幅に削減されました。2005年から2017年の間に、ロシアでは20ポイント、メキシコでは18ポイント、ポルトガルでは16ポイント、オーストラリアとニュージーランドでは10ポイント下落しました。

 本報告書によると、OECD諸国平均で15~24歳の若者の約6人に1人が職業訓練プログラムに入学しています。高等教育を修了した若者と、後期中等教育までの若者との学歴格差は狭まっています。2018年には、後期中等教育または高等教育以外の中等後教育を修了した若者の割合は41%でしたが、それは高等教育修了者の割合である44%とほぼ等しくなっています。

 「図表でみる教育」は、世界各国の教育の現状を測った比較可能な統計データを収録しています。OECD加盟36か国の他、アルゼンチン、ブラジル、中国、コロンビア、コスタリカ、インド、インドネシア、ロシア、サウジアラビア、南アフリカの教育制度を分析しています。

 

その他の主な結論: 

学歴と成果

  • 25~34歳の高等教育修了者の割合は、2008年から2018年の間にOECD平均で9ポイント上昇したのに対して、前期中等教育までしか修了していない成人の割合は19%から15%に下落した。 (Indicator A1)
  • 収入における男女格差はあらゆる学歴レベルに残っており、この格差は高等教育修了者間のほうが大きい。同じ専攻分野の学位を持っていても、女性の収入は男性より少ない。(A1)
  • OECD諸国平均で、18~24歳の14.3%がニート(就学、就労、職業訓練のいずれも行っていない)である。ブラジル、コロンビア、コスタリカ、イタリア、南アフリカ、トルコでは、18~24歳の25%以上がニートである。(A2)

 

教育の受けやすさ

  • OECD諸国平均で、OECD諸国の半数において、17~18歳の約70%が後期中等教育に進学しており、19~20歳の40%以上が高等教育に進学している。(B1)
  • ほぼすべてのOECD諸国で、2017年に早期幼児教育・保育を受けている4~5歳児の割合は90%を超え、3歳児の完全参加を達成している国が加盟国の3分の1に上る。 (B1)
  • 現在の推計値によると、OECD諸国全体の86%の人々が生涯のうちに後期中等教育を卒業し、そのうちの81%は25歳になる前に卒業する。 (B3)

 

教育支出

  • OECD諸国全体で、初等教育から高等教育までの生徒一人当たりの教育機関向け支出は平均10,500米ドルである。高等教育の学生一人当たりの平均支出は、他の教育レベルのそれの1.7倍多い。 (C1)
  • 教育支出は、あらゆる教育段階、特に高等教育レベルにおいて、2010年以降在籍学生数よりはるかに速いペースで増加している。2010~2016年の間に高等教育以外の教育段階の生徒一人当たりの支出は、生徒数が変化していないにもかかわらず5%増加した。高等教育段階では支出が9%増加、学生数は3%増加した。 (C1)
  • 2016年の初等教育から高等教育の公財政教育支出の政府支出全体に占める割合は、OECD諸国平均で11%で、最も低いのはイタリアの6.3%、最も高いのはチリの17%である。(C4)

 

 

  • OECD諸国の生徒は、初等教育から中等教育までの義務教育全体で平均7,590時間授業を受けているが、ハンガリーの5,973時間から、そのほぼ2倍に当たるオーストラリア(11,000時間)、デンマーク(10,960時間)まで幅がある。(D1)
  • 数学に充てられている授業時間の割合は、初等教育では最も低いのはデンマークで12%、最も高いのはメキシコで27%である。前期中等教育では、最も低いのはハンガリー、アイルランド、韓国の11%、最も高いのはチリ、ラトビア、ロシアの16%である。(イタリアでは自然科学を含めて20%。)(D1)
  • OECD諸国平均で、初等教育の教師一人当たりの児童数は15人、前期中等教育では生徒数は13人である。初等教育の一学級の平均児童数は21人、前期中等教育では生徒数は23人である。(D2)
  • 教員現場の高齢化が進んでいる。2017年には、OECD諸国平均で、初等教育から中等教育までの教師の36%が50歳を超えており、2005年に比べ5ポイント上昇している。30歳未満の教師の割合はわずか10%である。また、教師は依然として女性が多く、OECD諸国平均で10人中7人が女性である。(D5)

 

「図表でみる教育」のカントリー・ノート、サマリー、主要データなど、詳細は下記のウェブサイトでご覧いただけます。 

http://www.oecd.org/education/education-at-a-glance/

 

報道関係者のお問い合わせは、下記までお寄せください。

OECD Director for Education and Skills Andreas Schleicher (tel. + 33 1 45 24 18 97);

OECD’s Media Office (tel. + 33 1 45 24 97 00).

 

ジャーナリストの方々は、OECDの専用ウェブサイトからダウンロードできます。(事前のお申し込みが必要です。)

 

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