起業家活動に回復の兆しが見え始めた

 

2016年9月28日OECDパリ発

OECDが本日発表した最新報告によると、金融危機後の起業活動の回復状況は国ごとにばらつきがあるものの、起業率はほとんどの国で上昇傾向にあり、暫定的な転換点に差し掛かったことが明らかになりました。

図表で見る起業2016年版(Entrepreneurship at a Glance 2016は、起業活動の回復は経済成長を改善する一助となり、新企業の創業率と生産性の伸びとの間にプラスのつながりがあることから、長期的な生産性向上につながると述べています。

 

本報告書によると、欧州の金融危機以後の経済成長は、米国の場合よりも、経済成長を牽引する中小企業(SME)の役割に大きく依拠しています。また、小規模企業が新規市場に参入する場合、大企業よりも大きな課題や障壁に直面することを証明するデータも提供しています。

本報告書2016年版に収録されているデータは、Facebook、OECD、世界銀行が共同で作成した画期的なオンライン月次調査から得られたもので、Facebookに登録している起業家の間には、前向きな見通しが見られることがわかりました。

Future of Business Survey(ビジネスの将来に関する調査)」は世界22カ国でFacebookを積極的に活用している小規模企業を対象に行われたもので、創造的破壊とイノベーションの重要性に関する新たな見解を明らかにしています。創業3年未満の新企業で前向きな展望を持ち、短期的に雇用拡大を見込んでいる企業の割合は、創業から10年以上経っている既存企業のそれよりもほぼすべての国で高くなっています。

OECDは、起業の主な要因において、ほとんどの国で引き続き男女格差があると指摘していますが、「Future of Business Survey」で得られた新たな証拠から、一旦稼働すれば、女性も男性と同じように自分の事業に自信を持っていることがわかります。平均すると男性の方が、事業を始めるための資金を調達するパイプがあり、起業のための訓練を受けていると答える傾向があります。こうした男女格差が、調査結果の差につながっていると考えられます。つまり、15~24歳の男性の5.1%が自営業であるのに対し、同年齢層の女性では3.6%です。他方、55歳以上の雇用されている男性の29.2%が自営業であるのに対し、女性では15.9%です。本報告書は、女性の取締役を増やす必要があると指摘しています。男女格差が最も顕著なのは日本です。ほとんどのOECD加盟国で、起業と事業拡大のための資金調達や訓練の利用において男女格差が見られますが、日本はその差が最も大きい国の1つです。例えば、適切な訓練を受けられると答えた人の割合は、男性が31%であるのに対して、女性はそのほぼ半分の17%で、その差はOECD平均の7%を大幅に上回っています。他の分野でも女性の弱さが見られます。日本では発明家に占める女性の割合が2014年時点で7%であり、G7諸国中下から2番目でした。この差はまた、自営業率で見る起業の成果にも影響を及ぼしているように見えます。日本では女性の自営業率は5%とOECD諸国中最低レベルで、男性の半分以下です。「Future of Business Survey」から得られた新たな証拠も同様の様相を示しています。2016年7-8月の調査結果によると、女性が経営する企業で今後6カ月以内にに雇用を増やす計画があるところは、は男性が経営する企業の半数でした。 

マルチーヌ・デュランOECD統計局長は、「起業のような複雑なトピックを1つの指標で正確に説明することはできない。市況から規制枠組み、企業文化、資金調達まで、さまざまな要因を組み合わせることで、起業活動の現状を余すところなく把握し、その強化につながる政策を提案することができる」と述べました。

 

主な結論:

  • ほとんどのOECD諸国では新企業の創業率の傾向は、金融危機以前の水準を下回っていますが、カナダ、フランス、オランダ、ノルウェー、スウェーデン、英国では、2015年末から2016年初頭は経済危機前の水準を上回りました。直近の傾向では、ほとんどのOECD諸国で上昇傾向を示しています。
  • 米国、日本、カナダ、ドイツ、ブラジル、南アフリカの2015年の倒産率は、金融危機以前の水準を下回りました。それに対して、オーストリア、フランス、オランダ、ノルウェーでは倒産率が非常に高く、特にイタリアでは経済危機以前の値の2倍、スペインではほぼ4倍でした。ただし、最新の四半期の傾向では、両国とも倒産率は大幅に下落しています。
  • ユーロ圏の中小企業数の伸びは米国のそれをはるかに上回っていますが、大企業数の伸びは反対の結果となりました。中小企業の労働生産性は低いため、これがユーロ圏と米国の間にある生産性格差の構造的要因であると考えられます。
  • 小規模企業は、一般に近隣諸国の市場にのみ商品を輸出します。例えば、欧州の小規模企業、零細企業は、近隣諸国との貿易の20%を占め、中国や米国への輸出に占める割合は5%強に留まります。遠方の国、特に新興市場への輸出の機会を増やし、中小企業の貿易障壁を削減すれば、企業の成長と起業家精神を刺激することができます。
  • 有形の資本集約型産業で輸出を行う中小企業はほとんどありません。しかし、マーケティング、デザイン、その他のニッチ産業など、無形資本が重要な役割を持つ知識資本を基にした活動では中小企業の割合が非常に高くなっています。知識型産業部門やニッチ産業で中小企業の発展を促す政策は、輸出での成功につながる一つのルートになる可能性があります。

 

「図表でみる起業2016年版(Entrepreneurship at a Glance 2016」は、OECD-Eurostat Entrepreneurship Indicators Programme (EIP)で収集された起業指標を収録しています。このプログラムは2006年に始まり、起業家精神の現れ、それに影響する要因、起業家精神が経済に及ぼす影響を見分ける概念枠組みに基づき、起業家精神とその決定要因を測る様々な尺度を開発しています。

「図表でみる起業家2016年版(Entrepreneurship at a Glance2016)」の詳細に関して、報道関係者のお問い合わせは、 OECDパリ本部メディア課 (+33 1 4524 9700, news.contact@oecd.org)までお寄せください。

 

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