世界経済が上向いている好機を生かして構造改革を実施し、長期的かつ包摂的に所得と暮らし良さを高めるべき

 

OECD -パリ、2018年3月19日

OECDの年報、『成長に向けて (Going for Growth) によると、政府は総合的な構造改革プログラムを実施して、経済成長をより強く、環境に配慮した、より包摂的なものにしなければならず、そうすることで現在の好景気がさらに拡大することが期待されます。

本報告書では、国ごとに優先すべき改革は何か、どのような政策方途を組み合わせると長期成長を促進し、競争力と生産性を向上させ、雇用を創出し、より包摂的で持続可能な経済を確かなものにできるかを判断しています。

2018年版では、包摂性を高めバランスの取れた所得配分を行うために重要な雇用・社会保障改革が引き続き優先されており、その成果が上がっていることを明らかにしています。若者と低技能労働者の雇用率は改善しています。しかし、就業・就学・職業訓練のいずれも行っていない若者の割合は一部の国々では依然として高く、雇用と賃金における男女差の改善にも更なる取り組みが必要です。

本報告書では、改革のペースが過去2年間すでにあまり早くなかったところへ、2017年にはさらに鈍化したと述べ、そのペースが速まる兆しもほとんど見られないことを明らかにしています。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、次のように述べています。「世界の主要諸国がいずれも景気拡大を享受している今、あまりにも多くの国々で人口の大半が直面してきた生活水準の長期にわたる低迷に、終止符を打つチャンスが訪れた。しかし、一貫した構造改革戦略とそれを実施する政治的意思が、世界的な好景気を持続させ、生産性と生活水準の永続的な改善につなげるために必要である。こうした改革は難しいものだが、強い成長へ回帰すれば、成果をもっと早く享受できるはるかに良いチャンスが得られるのである。」

本報告書では、政府がその改革の取り組みを、スキル開発とイノベーション能力を切り開き、企業の活力と知識の普及を促進し、社会的包摂性を維持しつつ労働者が活力ある労働市場の恩恵を受けられるようにすることを目指す政策パッケージに集約させるべきだと述べています。

アンヘル・グリアOECD事務総長は次のように述べています。「G20諸国で行われている重要な改革が少なすぎるため、生産性を高めたり、経済のマクロ経済の刺激策を信頼したりすることができない。各国政策当局は各国ごとでも集団的にでも、よく知られた成長の弱点に対処し、その経済の土台を作り、あらゆる市民がデジタル転換を最大限生かせるようにする方法を見いだす必要がある。」

アルゼンチンのブエノスアイレスで開催されているG20財務大臣・中央銀行総裁会議にて、グリア事務総長はニコラス・デュジョヴヌアルゼンチン財相とともに本報告書の発表会見を行い、本書が提案している政策提言を実施することで、G20が目標として掲げるより強くより包摂的な成長の実現に近づけると述べました。

 成長に向けて』の分析は、OECDが幅広く貢献しているG20 強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組みの一環となるものです。OECDはG20諸国とともに、GDPを引き上げ、国の成長戦略目標を達成するという取り組みを数値化しています。

改革の処方箋は国ごとに異なります。新企業の参入や退出への規制障壁を引き下げることでより競争的なビジネス環境を創出すること、企業の急な解雇や雇用喪失に労働者が対処できるように求職支援や生涯学習プログラム、その他の方策によって失職した労働者の復職を促進する支援を行うこと、若者が将来の労働市場に対応できるよう基礎教育、職業教育を利用しやすくしその成果を向上させることなど、多岐にわたる提言を行っています。

本報告書は、改革のペースは国によっても政策領域によっても様々であると述べています。政府は具体的な改革の取り組みを特定の政策分野に集中させる傾向があり、政策の相乗効果や改革の相互補完性から得られる潜在的なメリットを取り逃す恐れがあります。改革の提示方法を改善すれば、改革は実行し易くなり、成長と雇用創出に対する改革の影響を最大化するとともに、複数の政策分野への意図しない結果を避け、所得格差を是正する助けにもなります。

今年度版では特に以下の点を強調しています。

  • 改革のペースは、どの国でも概して過去2年間に観察された比較的緩やかなペースが続いている。先進諸国、新興諸国とも、世界経済危機の直後に見られたような速いペースに戻る兆しは見られない。
  • 改革のペースは鈍いものの、大胆な改革が一部で見られた。その顕著な例は、ギリシャとイタリアで実施された社会保護強化のための改革、長年の懸案だったフランスの労働市場改革、保育園の定員増加に向けた日本の大規模な施策、インドにおける物品・サービス税の導入、アルゼンチンの税制全面改革などである。  
  • 技能獲得やイノベーション力強化のための改革では、研究開発支援の規模と効率の向上に向けた対策が特に広がっており、高等教育の大幅な改革は減少している。
  • ビジネスの活力を高め、知識の普及を促進するために実施された改革では、その大半が物理的インフラ及び法的インフラの強化を目指す施策、そして商品市場の規制を競争により適したものに変更する施策だった。
  • 社会給付改革には数多くの取り組みが行われているものの、労働者が雇用や職業の急速な変化に対処できるようにするため、更なる改革が必要である。例えば、労働市場活性化政策、住宅政策などの分野での改革は、雇用市場の変化と流動性を促進する。

 

Going for Growth 2018の詳しい情報は、以下のサイトでご覧いただけます。
http://www.oecd.org/economy/going-for-growth.htm.
OECD加盟国、G20諸国の詳細な国別報告もこちらに掲載しています。

報道関係者のお問い合わせは下記までお寄せください。

Lawrence Speer (+33 6 0149 6891)

OECD Media Office (+33 1 4524 9700)

 

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