OECD ― Paris、2020年4月
コロナウイルス予防をうたって市場に出回っている偽薬品が最近押収されましたが、このことは、増加する偽造薬の国際取引に対処することの重要性を強調しています。偽造薬の取引高は年間数十億ユーロに上り、人々の生命を危険にさらしています。
OECDとEU知的財産庁が共同作成した報告書、 「偽造薬取引(Trade in Counterfeit Pharmaceutical Products)」と、 偽造薬とコロナウイルス危機との関連を取り上げた報告書 によると、偽造薬または欠陥薬剤の不法取引と販売により犯罪グループが利益を上げ、人々の健康が脅かされるとともに、重要な産業の収入と税収が流出しています。2014~16年の税関における押収を分析したところ、偽造薬の取引高は2016年には40億ユーロに上りました。この数値には、国内で生産、消費された偽造薬と、輸送中に盗まれ販売目的で他の市場または国に転送された薬剤の出荷分は含まれていません。
アンヘル・グリアOECD事務総長は次のように述べています。「偽造薬や欠陥薬剤の販売は卑劣な犯罪であり、世界がコロナウイルスのパンデミックと闘っているこのときにコロナウイルスにかかわる偽造薬が摘発されたことは、この国際的な課題への取り組みが急務であることを示している。我々が入手したこの違法取引の価値、範囲、動向についての実証が、この問題との闘いを早急に解決に導いてくれることを望んでいる」
インターポール(国際刑事警察機構)は、 コロナウイルス関連の偽造薬が増加していることを最近公表 しました。偽のコロナウイルス検査器具、マスク、手指消毒剤が、米国税関及び国境監視機関や 世界税関機構などの税関当局で押収されています。
OECD-EUIPOの報告書によると、2014~16年に押収された偽造薬のほとんどが、偽の抗生物質、インポテンス治療薬、鎮痛剤、さらにマラリアや糖尿病、てんかん、心臓病、HIV/AIDS、がん、高血圧、アレルギーなどの薬です。その大半には有効成分が誤った割合で含まれており、効果は期待できません。また多くの偽造薬には人体に深刻なリスクをもたらしかねない未申告の物質が含まれています。疑わしいサンプルについて法医学的検査を行ったところ、その90%が有害である可能性があることがわかりました。
世界的に需要があること、利益率が高いこと、発覚のリスクが低いことから、薬剤は特に偽造されやすくなっています。犯罪グループは基準を満たしていない成分で作られた薬品を不法に取引したり、病院向けの合法の薬剤を盗んでしばしば有効性が損なわれるような劣悪な条件で保管し、低価格で路上で販売したりしていると考えられます。
偽造薬や欠陥薬剤の流通量は、オンラインの不正な薬局が増加しているため―ウェブサイトで薬剤を販売している業者の96%は違法操業―、また郵便サービスの利用が増加しているため、うなぎのぼりとなっています。郵便を利用されると、不適切な宛名ラベルなどのために捜査と遮断が難しくなります。
近年押収された偽造薬の半分以上はインドから、そして3分の1近くは中国から送られ、主な送り先はアフリカ、欧州、米国です。供給網における重要な中継点はシンガポールと香港で、その他アラブ首長国連邦、エジプト、カメルーン、トルコを通るルートがあります。偽造薬の被害を最も深刻に受けているのは、米国、EU、スイスの製薬会社です。
OECDは各国政府とともに数年にわたり、偽造品取引を蔓延させる規制の隙間と拙い法執行に対処してきました。
本書について詳しくは、下記までお問い合わせください。
Catherine Bremer in the OECD Media Office (+33 1 45 24 80 97).
本報告書は下記のリンクからダウンロードできます。
Trade in Counterfeit Pharmaceutical Products
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