アジア・太平洋地域:税収の減少で課税ベース拡大の必要性が浮き彫りに

 

2018年11月29日

本日公表された「アジア太平洋諸国の歳入統計(Revenue Statistics in Asian and Pacific Economies)2018年版によると、税収の対GDP比がアジア・太平洋地域16カ国のほとんどで2015~2016年に下落しました。これは、政策改革と天然資源価格の下落が原因です。

過去10年間、大半のアジア・太平洋諸国で税収が増加しましたが、2015年から2016年には、税収の対GDP比が上昇した国は16カ国中わずか3カ国でした(前年は9カ国)。

本報告書では今回初めて、太平洋島嶼諸国6カ国-クック諸島、フィジー、パプアニューギニア、サモア、ソロモン諸島、トケラウ-と、オーストラリア、ニュージーランド、タイのデータを収録し、本書に収録される国の数は16カ国になりました。本報告書はOECD税制・税務センターとOECD開発センターが、アジア開発銀行(ADB)、 Pacific Island Tax Administrators Association (PITAA)、南太平洋連合(SPC)との協力のもとで、欧州連合の支援を受けて執筆しました。また本報告書では、国ごとに大幅に異なる納税者コンプライアンスの管理について特集しています。

2016年の税収の対GDP比は、アジア・太平洋諸国間で大きな差がありました。本書に収録されている太平洋諸国では、税収の対GDP比が最も低かったのはパプアニューギニアの12.2%、最も高かったのはクック諸島の30.0%でした。2カ国を除く全ての太平洋諸国で税収の対GDP比が24%を超えましたが、オーストラリアとニュージーランドは27%を上回りました。それに対してアジア諸国の税収の対GDP比は、最も低かったのがインドネシアで11.6%、最も高かったのは日本で30.6%で、日本と韓国を除く全てのアジア諸国の比率が19%を下回りました。本書に収録されている全ての国々の税収の対GDP比は、2016年のOECD平均である34.0%を下回りました。アジア太平洋諸国には、課税ベースを拡大して国内の歳入水準を高め、外的ショックへの脆弱さを改善する余地があります。

2015年から2016年にかけて見られた税収の対GDP比の変化が特に顕著だったのは、太平洋諸国です。フィジー、パプアニューギニア、ソロモン諸島ではその比率が最も大幅に下落した(0.9%ポイント以上)のに対して、クック諸島は最も大幅に上昇しました(1.5%ポイント)。ほとんどの太平洋諸国が、本書に収録されているアジア諸国の多くと比べて、高い比率を維持しました。

租税構造は、国ごとに大きく異なります。全ての国々で、法人税からの歳入が国際水準から見て高く、2016年には最も低いサモアでは全税収の9.4%を占め、最も高いマレーシアでは41.1%を占めていました。どちらもOECD平均の9.0%を上回っています。しかし、3カ国を除く全てのアジア諸国は、法人税収の水準が個人所得税収のそれを上回ったのに対して、フィジーを除く太平洋諸国では逆になりました。

財・サービスへの課税もアジア太平洋諸国の重要な歳入源です。付加価値税が徴収されている太平洋諸国では、それが2016年の税収において重要な役割を果たしており、オーストラリアとパプアニューギニアを除く国々では歳入の25%以上を占めました。付加価値税はアジア諸国では重要度が低く、インドネシアを除く全アジア諸国の税収全体の25%を下回っていました。

 

主な結論

税収の対GDP

  • 2016年の税収の対GDP比は16カ国間で差があり、最も低いのはインドネシアの11.6%、最も高いのはニュージーランドの31.6%だった。16カ国とも税収の対GDP比は、OECD平均の34%を下回った。
  • 本書に収録されているアジア8カ国中6カ国の税収の対GDP比は、19%を下回ったのに対して、太平洋諸国8カ国中6カ国では24%を上回った。
  • 本書に収録されている国々のほぼ3分の2の国々で、2015年から2016年にかけて税収の対GDP比が下落した。
  • 税収の対GDP比が2015年から2016年に最も大幅に変化したのはパプアニューギニアとソロモン諸島(それぞれ2.2%ポイント、2.1%ポイント下落)と、クック諸島と韓国(それぞれ1.5%ポイント、1.1%ポイントの上昇)であった。
  • 2007年から2016年の間に税収の対GDP比が上昇したのは10カ国だったのに対し、下落したのは6カ国である(カザフスタン、パプアニューギニア、ニュージーランド、オーストラリア、マレーシア、インドネシア)。

租税構造

  • 2016年に所得税が税収の大部分を占めた国々は、オーストラリア、インドネシア、韓国、マレーシア、ニュージーランド、パプアニューギニア、フィリピン、シンガポール、トケラウである。これらの国々のうち、所得税収の比率が最も低かったのは韓国の31.2%、最も高かったのはパプアニューギニアの61.5%である。
  • 財・サービスへの課税は、カザフスタン、タイ、フィジー、クック諸島、ソロモン諸島、サモアでは主な税源で、全税収に占める比率が最も低かったのはカザフスタンの48.2%、最も高かったのはサモアの77.2%である。
  • このうち、付加価値税収入が全税収に占める割合が最も低かったのはオーストラリアで12.9%、最も高かったのはクック諸島の46.1%である。(ソロモン諸島とトケラウは付加価値税を課していない。)
  • 社会保険料が主要な税源となっているのは日本である(全税収の40.4%)。社会保険料が税収に占める割合は、韓国(26.2%)を除く他のアジア諸国では小さく、太平洋諸国には存在しない。

 

本報告書は、下記のウェブサイトでご覧になれます。

 http://oe.cd/revenue-statistics-in-asia-and-pacific-2018

 

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