OECD－パリ、2019年5月20日

持続可能な開発目標の達成期限である2030年まで残すところ11年となり、先進諸国の中には貧困削減、若者の雇用、教育、訓練の促進、男女平等、数的理解力の向上といった分野では依然としてターゲットの達成に至らない国々がいくつかあります。

OECDの新報告書、「SDGターゲットまでの距離を測る 2019年版 ：OECD加盟国の現状評価 (Measuring Distance to the SDG Targets 2019: An Assessment of Where OECD Countries Stand)」によると、ほとんどOECD諸国で電力、モバイルネットワーク、基礎的衛生施設が広く利用できます。OECD諸国は妊産婦と乳幼児の死亡率に関するターゲットは達成しており、エイズ、結核、B型肝炎、交通事故による死亡者数も減少しています。喫煙率も徐々に下落し、再生可能エネルギー源の導入が進んでいます。しかし、OECD諸国でも多くの人々が取り残されており、男女平等や不平等の削減に関わるターゲットがまだ達成できていません。さらに懸念すべきことに、一部のターゲットについて誤った方向に進んでいる国々があり、2005年以降実績が悪化しています。

とりわけ中期的なGDP成長率と生産性の伸び率は、多くの国々で下落傾向にあります。OECD地域全体で7人に1人が貧困状態にあり、15歳以上の成人の4人に1人が基礎的な数的理解力を身につけていません。肥満率と失業率は2005年以降OECD諸国の3分の1にあたる国々で上昇し、また13カ国ではワクチン摂取率が下落して根絶されたと考えられていた疾病が大流行する恐れがあります。絶滅危惧種の数はOECD諸国の3分の2にあたる国々で上昇しています。

アンヘル・グリアOECD事務総長は、OECDウィークのオープニングイベントで次のように述べました。「SDGsと2030アジェンダの誰も取り残されないようにするという目標は、将来の世代に対する我々の約束であり、責任である。残念ながら、我々はまだその使命を達成したと宣言できる状態に至っていない。我々は取り組みを倍加させ、国際社会が4年前に設定した2030年という期限までにこれらのゴールを確実に達成するべく、協力しなければならない。これは、我々の子供と地球環境に対する義務である。」

本報告書は、244の指標からなる国連グローバルリストを用いて、各国の進捗状況とデータが欠如している分野をSDGの17のゴールとそれを支えるターゲットについて比較するという独自の手法を用いています。また、2030アジェンダのターゲットの半数以上が国境を越えて影響を及ぼすので、それを一国内で達成すると他国または気候のようなグローバルな公共財にも何らかの影響があることを明らかにしています。

本書の主要な結論は以下の通りです。

• OECD地域全体の人口の約14％が相対的貧困状態で暮らしており、貧困率を半分にするという目標の達成には程遠い（OECD諸国の貧困率中央値の半分は5.5％）。 
• OECD諸国全体で、若者の14％が教育も訓練も受けておらず働いてもいない。その割合はイタリアとトルコでは20％を上回り、チリ、メキシコ、スペインでは少なくとも17％に達する。
• 女性の中央政府議員数は、OECD諸国平均で全議席数の3分の1を下回っている。男女議員数を同程度にするというターゲットを達成している国は1カ国もない。
• 政府開発援助(ODA)は、依然として国連の目標とする国民所得の0.7％の半分にも満たない。
• OECD諸国全体で女性の約6％が過去12か月間にパートナーから暴力を受けたと報告しており、中にはその割合が11％に上る国もある。これは、女性に対するあらゆる形態の暴力を根絶することを目指すターゲットの達成からは程遠い。
• 遺伝物質が保存されているのは、OECD諸国平均で在来種の3％に過ぎず、その割合が最も高い国で31％である。
• 国連グローバルリストの指標に重大なデータの欠如があるということは、SDGターゲットの3分の1以上についてOECD諸国の実績を評価できないということである。環境目標が特にデータが欠如している分野である。 

 

本報告書は、以下のサイトからダウンロードできます。

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